第15章 第十五話
「…アザミ、もうみんな分かってるんだよ。これ以上嘘つくのやめな…」
木手と2人だと思っていたアザミは、木手の後ろから聞こえてきた声に驚いた。
姿を現したのは、田村といつも自分の取り巻きをしていた女子2人だった。
「はっ、裏切るんだ、アンタたち。でも言ったよね?アンタたちも同罪だって」
木手の前で猫をかぶることも忘れて、アザミは取り巻き連中を睨み付けた。
「認めるんですね?自分がやったと」
静かに木手がそう言うと、アザミは開き直ったようにフンとそっぽを向いた。
「あーそうよ、私がやったの。それで?私はただ書きこんだだけ。実際如月襲ったのは、あのSNS見て発情した馬鹿男でしょ」
アザミのその言葉に、木手の体の血が一気に沸騰した。
ぐっとアザミの首を片手で持ち上げて、手すりの外にアザミを体を落とそうとした。
「ちょ、ちょっと、木手君…!」
小さく悲鳴をあげて、取り巻き連中は木手の暴挙に身体を震わせた。
首を締め上げられているアザミは苦しそうな顔で、木手を見下ろしていた。
「馬鹿は死なないと治らないといいますからね」
ゆっくりとアザミの体が手すりを乗り越えていく。
その様子を女子は震えながら見つめるしかできなかった。
しかし、そこで田村だけは、なけなしの勇気を振り絞って、木手の体にしがみついた。
「だ、ダメだよ木手君!人殺しになっちゃう!!」
「元より俺はそのつもりですよ、邪魔しないでもらえますか」
「…如月さんはそんなこと望んでないはずだよ!」
「如月」という単語にぴくり、と木手の体が反応した。
アザミの苦しそうな声だけが漏れ、しばし沈黙があたりを支配した。