第2章 第二話
「ばいばい、知念くん。」
「おぉ、またな」
木手に半ば引きずられながら部屋を出ていく如月の後をついて、玄関先から2人を見送ろうとすると、それまで静かだった木手がようやく口を開いた。
「見送りはいいです。知念クンは猫の世話があるでしょ。…ちゃんとシャンプーしてあげなさいよ。そうしたら美鈴のアレルギーも少しは軽くなる…かもしれません」
木手は知念が如月にしたことを気に留めているのかいないのか、知念には分からなかった。
もし自分が逆の立場だったら、木手の前では平静を装って、彼女と2人きりになった時に不機嫌になるかもな、と考えた。
そうなると木手も同じかもしれない。
これから2人きりの帰り道でまた2人はしようもない言い争いをするのかもしれない。
自分という存在が2人の間に波紋を起こす。
そのことが知念にとって言いようのない愉悦を感じさせていた。
我ながらいい性格をしているものだ、と雨の中に消えていく2人の背中を見送りながら知念は思った。