第2章 第二話
「ほら、今日はもう帰りましょう」
「あーい…ちねんくんありがとぉ。またみにきていーぃ?」
身長差のせいではあるが、上目づかいで(加えて鼻のつまった声だから甘えたような感じがする)そう言う如月はどこか知念の妹達のようで。
ちび達にいつもするように自然と知念の手は彼女の頭を優しく撫でていたのだった。
「いつでも来たらいいさー」
きょとんとした顔で如月が知念を見たので、そこでようやく知念は自分が彼女に何をしていたかに気づき、慌てて手を頭からどけた。
クラスメイトとはいえ、如月は木手の彼女だ。
如月とは他のクラスメイトよりか仲の良い方ではあるが、彼氏の目の前でこんなに軽々しく頭を撫でるものではないだろう。
「…わっさん。つい、いつもの癖で」
知念が言葉少なに言うものだから、如月は『知念には人の頭を撫でる癖があるのだろうか』、と知念の思いとは全く違う方に彼の言葉を捉えてしまっていた。
けれどいくら思い返してみても、今までそんな癖を知念が見せたことは無かった。
彼が普段から口数が少ないのは如月もよく知っている。
知念が多くを語らないせいで、今まで何度か知念の言葉を誤解してしまったこともあった。
その経験を踏まえて、如月は一度導き出した自分の考えを消去し、知念の言葉の真意を彼に問うことにした。
「癖って?」
「…ちび達…わんの妹達にするみたいに…やってしまったってことやっさ」
「ふうん?私の事、妹みたいに思ってるってこと?」
「…あらん。(違う)そうじゃないが…」
そこで知念は押し黙ってしまい、そこから口を開きそうにないことは如月にも分かった。
木手に手をひかれ部屋から連れ出されそうになったので、如月はそこで知念を問い詰めることを諦めた。