第15章 第十五話
「ねぇ聞いた?3-1の女子が警察に事情聞かれたって話」
「聞いた聞いた!その子が出会い系のやつとか自演してたんでしょ?」
「あのSNSのやつ、本人が書いたっぽく無かったもんねぇ~。如月さんのイメージと全然違ってたじゃん」
「登録しなきゃ出会い系サイトの中見られなかったんでしょ?それ見つけたってツイートしてる時点でおかしいよね~」
当事者でない人間にとっては、如月の事件にまつわるあれこれは、単なる刺激的な話題の一つでしかなかった。
無責任にも掌を返したように如月はあんなサイトに登録するような人間ではない、という流れが主流になった。
そして、今度の標的は、如月に成りすましてSNSに登録をした女子生徒に徐々にシフトしていっていた。
ついこの間までクラスで力を持っていたはずのアザミは、今では彼女に話しかける者は誰一人としていない教室で、一人ポツンと席に座っていた。
いつも自分のそばに付き纏っていた田村でさえ、目も合わせようとしない。
(ちっ、なんなのよ…チクったの、絶対あいつだわ…。)
クラス中がアザミが事件に関与していると感じたのか、今度は一斉に彼女に対して敵意を向けた。
今まで自分にへいこらしていた人間たちが刃向ってくるその姿が、アザミは気に入らなかった。
そんな中で、木手だけは彼女に対していつもと同じように接してきていた。
それ以上に、一人ポツンとクラスで浮いている彼女を心配するかのように話しかけてくる木手に、アザミは気をよくしていた。
「大丈夫ですか、海本クン。…全く、無責任な噂が出回っていますね」
「…そ、そうなの。なんか私が犯人みたいな…酷いよね、みんなそれ信じちゃってさぁ…」
「俺は、信じていますよ。あなたはそんなことする人ではないと」
「あ、ありがとう!木手君…木手君が信じてくれるなら、私、大丈夫!」
(なんかよく分かんないけど、木手くんと近づけるなら今の状況も悪くないかも…?)
何故今この状況で木手がこんなに優しくアザミに接してくれるのか、アザミは深く考えることをしなかった。
それは急に孤立して心が寂しかったのもあったし、何より大好きな木手に構ってもらえることが嬉しかったからだった。