第15章 第十五話
木手のクラスでも状況は同じようなものだったが、苛立ちを隠さない木手に恐れをなして、その話をする者はほぼいなかった。
アザミや田村も、巡り巡ってきた噂を耳にしていた。
自分が思っていたよりも事が大きくなってしまったことに対して、田村は怯えていた。
あのアザミのSNSが今回の事件を引き起こしたのではないかと、それを知っている自分も犯罪の片棒を担いでいるのではないかと、怖くなったのだ。
「ね、ねぇ、アザミ…あのSNSやっぱりやり過ぎだったんじゃない…?」
恐る恐るアザミに尋ねた田村はアザミに睨み付けられ、うっ、と言葉を詰まらせて俯いた。
「…自業自得よ。あいつが私にそうさせたのがいけないんだから…」
アザミも自分のしたことの重大さにようやく気が付き、内心怯えていた。
無理やりにでも如月が悪いのだと思い込まないと、恐怖に押しつぶされそうだった。
いつか自分のしたことが白日の下にさらされてしまうかもしれない。
そうしたら、私は周囲からどんな目で見られるだろう。
アザミには、自身の保身のことしか頭になかった。
木手にこのことが知れたら、それこそもう立ち直れない。
どうかこのまま自分のしたことがバレませんように、アザミは願った。
「田村、お前も誰にも言うなよ。私がやったって。ていうか、あんたも同罪なんだからね?」
「えっ、私は…ただ見てただけだよ…」
「でも止めなかったでしょ。同罪よ」
「そんな…」
アザミの理屈は無茶苦茶な理屈だったが、止めもしなかったのは確かで、田村は仕方なくアザミの言うことに従うしかなかった。
しかしそのうち、教師の間でも出会い系SNSの話が話題に上がり、今回の事件に関係しているとして、何か情報を知っている者は速やかに名乗り出るように、と生徒達に通達されることになった。
「ねぇ、田村…やっぱりアザミのアレ、ヤバいよね」
「なんか警察も調べてるって話だし、バレんのも時間の問題っぽくない?」
アザミの取り巻きの女子が田村の元にやってきて、そんな風に話しかけてきた。
彼女達も田村と同じように、如月の事件に自分達が少なからず関与しているかもしれない事実に恐れをなしているようだった。
「…ね、チクっちゃわない?」
「私達まで巻き込まれる前に、さ…」