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純情エゴイスト(比嘉/知念夢)

第15章 第十五話


如月が襲われたことは、数日後ニュースとして報道された。
警察は如月を襲った犯人が複数だと発表し、目撃情報をテレビや新聞を通して募っていた。

被害者の名前は伏せられていたが、その日学校ではその話題で持ちきりだった。
如月を海で発見したのが比嘉中に在籍する生徒の親だったため、情報はそこから少しずつ拡散していった。
加えて、自校の生徒が被害に遭った為、比嘉中では緊急の全校集会が行われたのだ。

その日、何らかの理由で学校に姿を現さなかった女子生徒の何名かが、被害者ではないかと学校の中で噂にのぼった。
しかし次第に被害者が3年の如月美鈴であるという事実が3年生の間に広まって、2年、1年へと伝わって行った。

一両日中には如月が被害に遭ったという話が学校中を駆け巡ることになった。
よくも悪くも少しばかり名が知れていた為、話には尾ひれがついて、巡り巡って知念達の耳に入ってきた話は、事実とはかけ離れたものになっていた。

出会い系SNSのこともあってか、如月美鈴は性悪で男にだらしのない人間で、今回のことは起こるべくして起こったことだと。
今回は相手が悪くて、証拠隠滅の為に殺されかけたのだと、生徒達の間では噂になっていた。

同じクラスの生徒達の中にさえ、そんな嘘だらけの噂を鵜呑みにしている者がいた。
あろうことか、そんな噂を、下卑た笑みを浮かべて知念に「本当かよ」と確認してくるクラスメイトもいた。

「…しなさりんど(殴り飛ばすぞ)」

ニヤけた顔のクラスメイトに、知念は睨み付けながら低い声を出した。
静かに席から立ち上がった知念の迫力に気圧されて、「じょ、冗談だよ」とクラスメイトは後ずさりをする。
けれど知念はそんなクラスメイトを許せるはずもなく、胸ぐらを掴んでぐっと自分の眼前に引き寄せた。

「ひっ…わ、悪かったよ、知念…」
「あいつの事、これ以上侮辱するなら、殺す」
「わ、分かった、分かったから…本当にごめん…」

静かだが凄味のある知念の言葉は、クラスの誰にも冗談に聞こえなかった。
本当にこの場で殴り殺してしまいそうで、固唾をのんで状況を見守るしかなかった。
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