第14章 第十四話
「お水、お注ぎしますね」
静かに近づいてきた店員が二人のコップに水を注ぎ、また静かに離れて行った。
思いがけず途切れてしまった会話に、知念は次の言葉を静かに考えることにした。
その時、知念のカバンが微かに震え、静かな店内にラインの通知を告げる音が鳴り響いた。
悪い、と木手に断りを入れ、どうぞ、と木手が返す前に知念はごそごそとカバンの中からスマホを取り出した。
もしかしたら何か如月関係の連絡かもしれない、そう思うとはやる気持ちを抑えられなかった。
ディスプレイに触れて、ラインを開く。
ラインの送信者は平古場だった。
何かあったのかと思いながら、知念は黙って画面を見つめた。
ラインには、数枚の画像が張り付けられていた。
如月の顔と名前、適当な自己紹介が書かれている何かのサイトのようなものと、ツイッターのスクリーンショットだった。
『Twitterでこんなのが出回ってる。ツイートしてるのうちの学校の誰かだと思う。如月が出会い系に登録してる、ってツイートが拡散されてる』
「はぁ…?」
平古場が送ってよこした画像と文字に、知念の頭はついていけなかった。
出会い系になんて如月が登録するはずないし、こんな小文字混じりの自己紹介文なんて彼女が打つはずもない。
自己紹介の欄に『セフレ募集中。複数人でもOK。無理やりされるのが好きです。特にこういうシチュエーションが……』と書いてあるのに目がいき、スマホを持つ手が震えた。
黙り込んだまま画面を睨み付ける知念に、木手は知念の手元を見ながら声をかけた。
「…どうしました?」
「永四郎、これ…」
「…なんですか、これは…」
知念に見せられた画面を覗きこんで、木手は絶句した。
一つずつ画像を拡大しては隅から隅まで確認し、木手は眉根を寄せて険しい顔になった。