第2章 第二話
「そうねぇ…ちゃんとお世話するんなら、しばらく置いといてもいいわよ。ただ、ちび達が構い過ぎないようにちゃんと見といてあげてね」
「ああ。母ちゃん、かふーしやたさ(ありがとう)」
「ありがとうございます!」
「ふふ、本当可愛いわねぇ。永四郎くんのところもいいけど、うちにお嫁にきてもいいのよ?」
「いふーなこと言いさんけーどー!(変なこと言うなよ)」
「お母さん、こんな可愛い子なら大歓迎よ~」
口のへらない母親の背を押して、彼女の自室に追いやってから知念は玄関で待ちぼうけしていた2人を家にあげた。
一応知念の部屋となっている4畳の和室に2人を通し、適当な場所に座ってもらう。
「何か飲み物とってくる」
「お構いなく、知念クン。すぐお暇しますから」
「えー…」
「『えー』じゃないでしょうが。目が腫れてきている。あまり長居しない方がいい」
木手の言うとおり、知念の部屋にあがってからくしゃみを連発して目を痒そうにこする如月の姿は見ているこっちが辛くなるくらいだった。
部屋を出かけた知念はくるりと踵を返すと、ティッシュ箱を如月に押し付けた。
「ごべん、ありがとぉ」
鼻のつまった声でお礼を言う如月だったが、それもどこか知念には可愛らしく思えてしまった。
彼女の体調を心配する木手をよそに、知念は如月と猫のいるこの空間の空気を心置きなく味わっておこうと思っていた。
けれどそこに木手のツンと鼻につく整髪料の匂いが含まれていて、知念の試みはそこで中断された。