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純情エゴイスト(比嘉/知念夢)

第14章 第十四話



「病院の場所は聞いていますか」
「ああ、ここだ」

知念のスマホに表示された病院名を確認し、タクシーに乗り込んで運転手に目的地の病院名を告げる。
沖縄に到着するなり二人はすぐに如月の運ばれた病院へと向かった。

知念も木手も、一分一秒でも早く、如月の元に行きたかった。
行ったところで彼女に面会することは出来ないかもしれない。
それでも少しでも彼女のそばにいたい、そんな想いが二人を突き動かしていた。

病院に着いて、案内所で如月の名前を告げると、看護師はどこかに電話をかけ確認をとっているようだった。
しばらくしてカウンターに戻ってきた看護師は申し訳ないけれど、と前置きして面会ができない旨を二人に説明した。

「落ち着いたら、親御さんから連絡もあると思うから…」
「…分かりました…」

予想していたこととは言え、如月の顔を見る事すらできなかった。

「…普通に考えれば、そうですよね。俺としたことが馬鹿なことをしました…」
「…仕方ないだろ。こんな状況で冷静でいられるはずないやし…」

ロビーで互いに慰め合いながら、自販機で買ったお茶で喉を潤した。
朝から何も口にしていなかった二人のお腹がぐぅぅと音をたて、そこでようやく空腹を感じた。

「ひとまず、何か食べに行きましょうか」
「あぁ、そうするか」

二人で連れ立って近くのファミレスへと足を踏み入れた。
朝ということもあってか店は閑散としていた。
案内されたテーブルに向かい合って座り、各々メニューに目を落とす。

この時間は朝食セットしか取り扱っていないようで、二人ともすぐにメニューを決め、席に案内した店員にすぐさま注文を伝える。
かしこまりました、と頭を下げて厨房へと消えて行った店員の後ろ姿を見送り、二人はテーブルに置かれた水を口にした。
キンと冷えた氷水が寝不足の頭に響いた。

客の少ない時間だからか注文した料理がすぐに二人のテーブルに運ばれ、二人は勢いよく料理を口に運んだ。
あっという間に平らげてしまって空になった皿を見つめて、木手が口を開いた。

「俺は、犯人を見つけたら殺すと思います」

穏やかでない木手の言葉に知念は顔をあげた。
けれどその気持ちは知念とて同じだった。
大切に想う如月に酷い目に遭わせた男を、知念にだって許せるはずがなかった。
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