第14章 第十四話
翌朝、目を覚ました平古場は同室の知念がすでにベッドの中にいないことに気が付いた。
ベッドは綺麗に片づけられ、彼の荷物もすでに姿を消していた。
部屋に知念の気配も感じなかったことから、平古場は寝坊したかと慌ててベッドのデジタル時計に目をやった。
しかし時計が示している時刻はまだ7時前で、朝食の時刻までまだあと30分はあった。
「焦った~…。しかし知念のやつ、一体どこにいったんばぁ…」
あくびをしながら大きく伸びをして、ベッドからのそのそと下りた。
朝食に行く支度をして、廊下へ出た時、後ろから自分を呼び止める甲斐の声がした。
「おはよ、凛」
「おー、おはよ。…なぁ、裕次郎、寛の奴知らねぇ?部屋にいないんだけどよ。荷物もないし」
「なんだよ、寛もか!」
「寛も、ってどういうことだ?」
「いや、永四郎の奴も早朝沖縄に戻ったんだよ。…如月のことが心配なんだろ。昨日は一睡もしてなかったみたいだぜ」
平古場は昨夜の知念を思い浮かべ、そういえば知念も遅くまでスマホをいじっていたことを思い出した。
ぼんやり広がるディスプレイの明かりに平古場がまぶしいと文句を言って、知念が静かに部屋を出て行ったところまでは記憶にあった。
いつ知念が荷物をまとめて部屋を後にしたのか平古場には分からなかったが、昨日の様子だと甲斐の言うとおり、知念も木手と同じく早朝に沖縄に戻ったのだろう。
「はー…あったー(あいつら)、如月に対してすごい執着だな…」
「それだけ真剣だってことやんどー」
「でもまぁ…心配ではあるよなぁ」
「何事もなければいいけどな、如月」
廊下の大きな窓から、朝日の昇った雲一つない青空を見つめて甲斐と平古場は如月の無事を願った。