第13章 第十三話
きらきら輝く如月の笑顔を守りたいと思ったのは、木手も知念も同じだった。
少し前まで、いつまでも変わらない日常がこれからもずっと続くのだと思っていた木手と知念。
木手の隣で如月は笑い、それを傍らで知念が眩しく想いながらその笑顔に幸せを感じる。
あのままの方が、みな幸せだったのかもしれない。
そんな思いが知念の頭をかすめた。
如月の行方が分からないことで、いいようのない不安が、知念の気持ちをかき乱していた。
不安も苛立ちも、誰かにぶつけなければ知念は胸の痛みに潰されてしまいそうだった。
「…それでも、彼女は君を選んだんですよ、知念クン」
「……」
「…とにかく、今は彼女の無事を信じて待つしかない」
力なくうなだれる知念の肩を軽く叩いて、木手はそれ以上何も言わず部屋の中に戻って行った。
静かに閉まって行くドアを知念は立ちすくんだまま見つめていた。
「…寛、部屋に戻ろうぜ」
「…あぁ…」
平古場に促されて、知念はゆっくりとドアの前から視線を平古場に移した。
普段冷静沈着な知念があんなに激高することに少なからず驚いていた平古場だったが、以前帰り道で甲斐に対して怒鳴っていた知念の姿が思い出され、先ほどの知念の姿とかぶった。
知念にとって如月美鈴という少女はあれほどまでに感情を揺り動かすほどの存在らしい。
そこまで誰かのことを想ったことは、平古場にはいまだなかった。
肩を落として廊下をとぼとぼと歩く知念の背中を見ながら、平古場はそこまで誰かを想える知念のことを少しだけ羨ましく思った。