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純情エゴイスト(比嘉/知念夢)

第13章 第十三話


廊下に飛び出した知念は木手の部屋へと向かい、ドンドンと乱暴にドアを叩いた。
ドアはすぐさま開けられたが、知念にはやけに長く感じて、口から出た言葉に苛立ちが現れてしまう。

「永四郎、如月の行きそうな場所知らないか?!」
「…なんですか、知念クン。いきなり現れたかと思えば…」
「早く答えろ!」

木手に掴みかからんばかりの勢いで話す知念の様子に、木手だけでなく、木手と同室の甲斐もどうした?と顔を出した。
ただならぬ様子の知念に、木手は少しだけ沈黙した後、思いつく限りの場所を知念に伝えた。
木手の言葉を聞きながら、知念は手にした電話越しに母親に如月の行きそうな場所を伝えた。

『何か分かったら連絡いれるから』
「ああ、頼んだ」

電話を切って、顔を上げると木手と甲斐が説明して欲しそうに知念の顔を見ていた。
相変わらず気分が高ぶったままの知念だったが、ふぅと小さく息を吐いて気持ちを落ち着けようとした。

「…美鈴に何かあったんですか?」

口を開いたのは木手の方が先で、知念は木手の言葉にこくりと頷いた。

「まだ、家に帰ってきていないらしい」
「なんですって?」

知念の言葉に目を見開いて、信じられない、といった顔をした。

「もう21時過ぎやし。家出でもしたんか?」
「いえ、美鈴に限ってそんなことはありえません。彼女は……」

言いかけて木手は口をつぐんだ。
もう別れた彼女のことを、知念の前で雄弁に語るのも木手は違うような気がしたのだった。

「…すぐ見つかるといいな」

知念の後を追いかけてきた平古場がそう言うと、木手と知念は静かに頷き、甲斐は「そうだな」と小さくつぶやいた。
沖縄を離れている今、彼らに出来る事は如月の無事を祈るほか何もなかった。
重たい空気が流れる中、部屋に戻るぞと平古場は知念に声をかけたが、知念はそれに応じなかった。

「…永四郎。お前と別れてから、如月が何度も女子に呼び出しを受けてたの、お前は知ってたか?」

知念の言葉に、木手は苦い顔をした。
まっすぐ見つめてくる知念の顔を見ることができずに、木手は知念から目をそらして、彼のわきの方に目をやった。
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