第2章 第二話
「ただいま」
「お帰りなさい。…寛、そのダンボールは何?」
今しがた帰ってきたところだったのだろう、知念の母は仕事で着ていた綺麗なスーツ姿のまま知念達を出迎えた。
スレンダーなその体はスーツを着るとより一層栄えた。
知念のひょろりとした体形は、この母を見れば彼女譲りなのだと誰もが納得するだろう。
「猫、拾ってきたんやっさ」
「猫ぉ?…ちび達が悪しないかしらねぇ…」
困った顔をする母に、知念は俯いてダンボールの中の仔猫を見つめた。
自分の行く末に不安しか感じていないような目で知念を見つめる仔猫に胸が締め付けられる。
「あ、あの!貰い手が見つかるまでいいので、置いてもらえませんか?ご飯代は私のお小遣いから出すので!」
知念の体にすっかり隠れてしまっていた如月が声を上げると、知念の母は如月の姿を確認しようと顔をのぞかせた。
「あら!寛、可愛い子連れてきちゃって!彼女?」
「…あらん。(違う)永四郎の彼女やっさ」
「永四郎くんの?」
「すみません、突然お邪魔しておいて、ご挨拶も無しに不躾なお願いをして。」
まるで如月の保護者のように彼女の無礼を詫び、測ったかのような綺麗な角度でお辞儀をした木手を見て、知念の母の顔がほころんだ。
「いいのよ、永四郎くん、そんなに畏まらなくたって!寛のお友達ならいつでも歓迎よ~。それにしても可愛い彼女ねぇ~永四郎くんもやるわね」
「母ちゃん、それで、いいのか?猫うちに置いといても」
木手に対して母親が怒涛の質問攻めを始める前に、知念は口をはさんだ。
放っておいたらこのまま玄関で立ち尽くしたまま気の遠くなる時間を過ごさなければならなくなるところだっただろう。