第13章 第十三話
「こういうシチュエーションが好きなんだよね?サイトに書いてたもんねぇ?俺達もそういうシチュ大好きなんだぁ」
如月には男の言葉の意味が理解できなかったが、身に迫っている危険だけははっきりと分かった。
このままでは男達にいいようにされてしまう、そう思うと恐怖が如月の体を硬くさせた。
力を振り絞って、首を横に振るも、そんな仕草でさえ男達の情欲を煽ることに如月は気が付いていなかった。
「今日は思いっきり楽しもうねぇ」
ざらついた男の舌が首筋からゆっくりと胸元へ向かっていく。
伸びてきた何本もの太い腕が身体のあちこちをまさぐる。
吐き気を感じて如月は何度もえずいた。
(知念君…!知念君…!た、すけて)
『かんなじ守るから』そう言ってくれた大好きな彼は、今ここにはいない。
間の悪いことに、昨日から知念達テニス部は短期の合宿で沖縄の地を離れていた。
いくらここで如月が叫んだところで知念が彼女の前に現れることはない。
それでも声にならない声で如月はずっと知念の名を呼んだ。
男達の行為がエスカレートしていっても、少しずつ衣服が剥ぎ取られていっても、如月は必死に彼の名を呼んだ。
如月の届くことのない叫びは、またしても男達の加虐心を煽るばかりだった。
薄暗い小屋の天井をじっと見据えたまま、如月は抵抗むなしく男達の慰み者にされた。
もう何度目か知れない内臓を突き動かされる感覚も、何も感じなくなっていた彼女は、人形のように黙って目を開けているだけだった。
ようやく解放された時には、あたりは暗闇に包まれていた。
「また付き合ってねぇ」と笑う男達に何も反応を返さず、如月は小屋から足早に立ち去った。
途中こみあげてきた吐き気を抑えきれず、胃の中が空になるまで何度も嘔吐した。
殴られた顔の痛みも、噛みつかれた肌の痛みも、受け入れたくもないものを受け入れた身体の痛みも、すべてが彼女の心を引き裂いた。
彼女の体を動かしていたのは、ただ消えてなくなりたいという願望だけだった。