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純情エゴイスト(比嘉/知念夢)

第13章 第十三話


如月が登録したように装った出会い系のSNSをアザミがツイートをしてから数か月。
突き刺すような日差しが少しだけ柔らかく優しいものに変わり始めた頃、事件は起こった。





「如月、美鈴ちゃん?」


帰り道、知らない若い男に突然声をかけられ、如月は驚いた。
にこにこと笑いながら自分に近づいてくる金髪の口ピアスの男に、如月は嫌なものを感じていた。
こういった雰囲気の人間には関わらない方がいい、本能がそう告げていた。

詰められた距離を一気に離そうと、如月はくるりと向きを変えて元来た道を戻ろうとした。
が、振り返った先にも数人の男がニヤニヤしながらこちらに近づいて来ていた。
如月がしまった、と思った瞬間、すぐ後ろに先ほどの男の気配を感じた。

すぅっと息を吸い込んで大声をあげようとした如月の口を、詰め寄ってきた男達が乱暴に塞いでくる。
口の中にタオルを詰め込まれて、手首を力任せに掴まれ、そのままそばに停めてあった黒いワゴンの中に引きずり込まれた。
急いで車に乗り込んだ男たちは、暴れる如月を殴りつけて静かにさせた。
ガン!と頭に衝撃が走って、如月の意識は次第に薄れていった。


次に如月の意識が戻ったのは、薄暗い小屋の中だった。
高いところにある小さな窓から薄ぼんやりと外灯と思しき光が見えていた。
汗と熱気がむせ返るようにたちこめる小屋の空気に、如月は顔をしかめた。
霞む視界に目をしばたたかせ、今の状況を把握しようとズキズキと痛む頭を必死で働かせた。

「目ぇ覚めた?手荒なことしてごめんねぇ?」

ニヤニヤしながら金髪の男が近づいてきて、如月の眼前でじっと目を覗き込んでくる。
ニィッと持ち上げられた口端を見て、如月の背筋に冷たいものが伝った。
逃げ出そうにも縛られた手足は自由が効かないし、口にはさるぐつわをかまされて、声をあげることもできなかった。
双眸からボロボロとこぼれる涙を見て、男はケタケタと笑い、そそるねぇと呟いた後に如月の頬に伝う涙を舌で舐めとった。
熱っぽい男の舌に反して、舌につけられたシルバーのピアスの感触はヒヤリとしていて如月はまたゾッとした。
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