第12章 第十二話
『セフレ募集中。複数人でもOK。無理やりされるのが好きです。特にこういうシチュエーションが……』
先ほど作った写真をアップロードして、アザミは登録ボタンを押した。
慣れた様子で登録を済ませたアザミは涼しい顔をしていた。
ほんの数分の出来事に、取り巻きの女の子達もどこかポカンとしていた。
「…ちょ、大丈夫?こんなん書いて…」
我に返るのが一番早かった田村がそう口を開くと、アザミはにっこりと笑った。
「大丈夫だって。住所だって適当だし。それに、これをツイッターにあげて遊ぶだけだし。こいつこんなんやってるよ、ってさ」
「あー…なるほどね」
アザミの真意は田村には分からなかったが、あまり深く追求して彼女の機嫌をそこねるのも怖かったので納得した風を装った。
アザミは周囲の反応を気にするでもなく、先ほどのSNSのスクショを撮ってツイートする。
『うちの学校の子見つけた』
アザミが書きこんだのはたったそれだけの言葉だった。
放課後、アザミは田村に自身のツイートを誇らしげに見せた。
アザミから受け取ったスマホを恐る恐る触って、田村はツイッターをチェックした。
アザミのツイートの後、それを見た顔も名前も分からない誰かが、続々とアザミのツイートを拡散したりコメントをつけていた。
書いてある内容から察するに、コメントをつけているのはこの学校の生徒なのは確かだった。
『あーこの人ならやってそう』
『清純そうに見えて、ってやつ?』
『今もう新しい男いるんでしょ』
『男遊び激しいんだね』
『木○くんも騙されてたんだー』
「ほら、これだけ嫌われてんだよ、あいつ。私達と同じ思いの人間がこんなにいるんだよ」
にやりと顔を歪めて笑うアザミに、田村の背筋にぞくりと寒気が走った。
なんとなしに流されて今までアザミに付き従っていた田村は、このまま放っておいたら酷いことが起きるような気がしていた。
けれどこの流れを止める程、彼女に勇気はなかったし、その力もなかった。
ただ事態を傍観している他、彼女に選択肢はなかったのだった。