第11章 第十一話
擦りむいた膝についた砂を払いながら、如月は痛みに顔をしかめた。
知念は如月を黙ったまま見つめ、彼女の言葉の続きを静かに待った。
「私、木手君にひどいことしたと思って。その気もないのに告白受けて、あまつさえ振ってさ。…木手君と付き合ってるのに他の人のこと、想ったり。
彼のこと傷つけてばかりだったの、私。だから呼び出しとか嫌味とか嫌がらせは、その報いなんだって思う」
「それは違う」
そのくらいで如月がこんな仕打ちを受けなければならないのなら、彼女に手を出しかけた自分は一体どうなる。
まだ木手の彼女だった彼女を押し倒して自分のものにしようと一瞬でも考えた、自分は?
「やーは何も、悪くない」
「…ありがと、知念くん。そうやって言ってくれる人がいるだけで、私、大丈夫だから」
笑ってそう言う如月に、知念の胸は締め付けられた。
きらきら輝くその笑顔をずっと守ってやりたいと、知念は思った。
「辛い時はわんに言え。かんなじ(絶対)守るから」
必死で強がる如月を守りたい、そう思ったら知念の体は自然に動いて、自分の中に彼女をしっかりと抱きしめていた。
如月も知念の背中に手を回し、ぎゅっと知念に抱き着いた。
小さな彼女の体から伝わる暖かな体温が、知念の心にまで届いて、緩みそうになる頬を知念はぐっと噛みしめた。
そんな2人を見つめている人物がいることに、知念も如月も気づかないまま、しばらく二人は抱き合っていた。