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純情エゴイスト(比嘉/知念夢)

第11章 第十一話


今現在も、校舎の隅で3人の女子に囲まれ、ネチネチと木手をフッたことに対して嫌味を言われ続けている。

「木手くんフッたってどういうこと?」
「何様のつもり?」
「告られたからって調子のってんじゃねーよ。どれだけ木手くんが傷ついたと思ってんの?」

如月は彼女達の言葉に黙ったまま言われるがままになっていた。
何か口を開けばそれは反抗と取られ、彼女達の口撃の材料となってしまうことを、如月は今までの経験で嫌と言うほど学習していた。
だから敢えて何も言わず黙って彼女達の話を聞いていたのだが、そんな如月の態度も、彼女達の気に障ったようだった。

「黙ってないで何か言ったら?」

肩を勢いよく押され、思わず後ずさった。
その距離を詰めるように女の子達はにじり寄ってきて、険しい表情で如月の顔を覗き込んだ。
あからさまに向けられた敵意に、目を背けたくなるのを我慢して、如月は真正面から彼女達を見据えた。

「…貴方たちは、木手くんのことが好き?」

ようやく口を開いた如月に、待ってましたとばかりに彼女達の目が輝きだした。

「はぁ?何言ってんの?当たり前じゃん」
「だったら、私が別れた方が嬉しいんじゃないの…?」

如月にとっては、彼女達の嫌味が心底無意味なものに思えて仕方がなかった。
そんなに大好きな相手の彼女が晴れていなくなったのだから、それは彼女達にとって喜ばしい出来事のはずなのに。
何ゆえこんなに自分に固執するのか、如月には本当に理解できなかったのだ。

それは至極当然のように如月の口から疑問として溢れ出てしまった。
けれどそのことが、彼女達の怒りに油を注ぐ結果となった。

「っ、あんたホントむかつく!」
「そういう余裕ぶってんの超腹立つ!」

般若のような顔で如月を睨み付け、彼女達はぐるりと如月を取り囲んだ。
逃げ場をなくした如月は、これ以上何を言っても何をしても彼女達の神経を逆撫でするだけだと思い、ひたすら黙って耐えることにした。

リーダー格の女子が如月の髪を乱暴に掴んで、引っ張った。
それに続いて取り巻きの2人も小突いて来た。
髪を掴まれたまま力任せに地面に押し倒されてしまう。
地面で擦れた頬や膝に痛みが走った。
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