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純情エゴイスト(比嘉/知念夢)

第10章 第十話


正確には聞いたというより、耳にした、というのが正しかったが。

「ぬーんち教えてくれないんばぁ、寛~」
「…そう軽々しく言う事じゃないやし…」

駄々っ子のように寛のケチ、と口をとがらせる平古場に、知念はつとめて平静を装って答えた。

「そうそう、馬に蹴られて死んじまうんどー」
「慧君、それ使い方間違えてるやっし。『人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ』やんに。わんは別に邪魔はしてないんど」
「凛、変なとこ真面目やし」

ケラケラと甲斐が笑うと、平古場は馬鹿にするな、と言って甲斐にとびかかった。
いつものようにじゃれ合う二人に田仁志はやれやれ~!と笑いながら二人をあおった。
ひとしきり暴れた後、先に飽きた平古場が甲斐を解放した。

「永四郎失恋パーティーでもするかぁ~」

のんきな声でそう言う平古場に、甲斐は呆れた声で返した。

「馬鹿、凛。そんなことしたら火に油注ぐようなもんやし!」
「分かってないんど、裕次郎は。こういう時は明るいノリで乗り切った方が傷の治りも早いやんに」
「…そうか?余計に永四郎怒らすだけな気がするけどなぁ…」
「そっとしといた方がいいんじゃねーか?フラれるなんて永四郎、初めてだろ」

田仁志が意外と冷静な意見を見せ、甲斐はそうだよなぁ、と彼の言葉に頷いた。

「そう言えばそうだな。永四郎フる女なんて、今までいなかったよなぁ。如月ってすごい奴だな…なんでフッたんだろうな?」
「さぁ…そんなん本人達にしか分からねぇだろ」
「誰か他に好きな奴でもできたんかもなー」

平古場が何の気なしに言ったその言葉に、甲斐と知念だけは反応せずにいられなかった。
2人とも平静を装ってはいたが、甲斐と知念はお互いが平古場の言葉に反応を示したことに気づいていた。

田仁志と平古場は二人で話に夢中になっているようで、甲斐と知念を気にする様子はなかった。
2人から少し離れたところで、甲斐は知念に話しかけた。

「…なぁ、寛。やー、如月に告ったんばぁ?」

唐突に投げかけられた甲斐の問いに、知念は一瞬目を見開いて甲斐を見た。
すぐにその目は細められたが、甲斐は驚いた知念の顔を見逃さなかった。

「いや。そんなことしてない」
「…じゅんにか?(本当か)」

まっすぐ知念の目を見つめて、心の内を探るように甲斐は知念に言葉を向ける。
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