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純情エゴイスト(比嘉/知念夢)

第9章 第九話


平古場がそう言うと、知念はこくりと小さく頷いた。

「あれ、今日は一緒に帰らなくてよかったのか?何も考えず誘っちまったけど」
「あぁ、別に…」

甲斐の言葉に知念は短くそう答えた。
仔猫がもらわれていった、と嘘をつくことも考えたが、いまだ引き取り手のみつかっていない仔猫は知念の家にいる。
ちび達は甲斐や平古場に懐いている為、いつ彼らに嘘がバレるとも限らない。
ここはあえて言及せずやり過ごした方が無難だろう、と知念は思った。

「まぁたまには二人でイチャイチャしたいんやし、永四郎も」
「あにひゃー(あいつ)如月にご執心だからなぁ」

言って顔を見合わせて笑いあう甲斐と平古場を、知念はなんとも言えない顔で見つめていた。
そんな知念に気がついた甲斐が、知念に問いかけた。

「そういえば、寛…こないだ如月とえらく見つめ合ってたけど…まさか、やー、如月ぬこと好きなのかぁ…?」

甲斐の言葉に、平古場がおいおい、と言葉をはさみつつも知念の返事に興味津々と言った顔で知念を見つめてきた。
田仁志も目を丸くして知念の様子をじっとうかがっている。

「……いや、ただのクラスメイトやっし…」

3人の注目を浴びていたたまれなくなった知念は重い口を開いてそう答えた。
知念が答えるまでに幾分か間が空いたことが、彼の答えが本心でないことを伝えていたが、それに気付いたのは甲斐だけだった。

「…気をつけろよ、永四郎、意外とヤキモチ焼きだからな」

甲斐は冗談にもとれる言葉で知念に釘を刺した。
知念は甲斐の目に宿っているものを見て、それが本気の忠告だということを感じ取った。
裕次郎は自分の気持ちに気が付いている、知念はそう悟って、分かっている、と甲斐の目をじっと見つめ返した。

「…だったら、いったー(お前ら)もわっちゃくさんけーどー(からかってやるなよ)」
「それはそれ!あにひゃー如月ぬ事になるとやけにムキになるやんに。いじらない手はないだろ」

知念の言葉に、あははと笑いながら平古場が答えた。
いつも木手に気圧されることが多いからか、如月のことは平古場にとって格好のネタのようだった。

それがもはや木手に通じなくなるとは、知念以外の誰も思ってもいなかった。
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