第8章 第八話
(もっと罵られるかと思ってた…木手くんは大人だな………ううん違うよね、彼なりのプライドなんだよね…)
最後まで弱さを見せることをしなかった木手の後ろ姿を、如月は見えなくなるまで見つめていようと思った。
感謝と尊敬の念を込めて、ぴんと背筋の伸びた木手の背中を見送る。
ふいに木手がこちらを振り返り、如月と目があった。
一瞬お互いに驚いた顔をしたが、木手は如月のことを振り切るように前を向いて、暗がりへと消えて行った。
別れを切り出したのは自分なのに、如月は胸がしめつけられ、苦しくなった。
玄関先にうずくまり、膝を抱えて静かに涙を流す。
制服の紺色のスカートに涙がいくつも染み込んでじわりじわりと広がっていく。
胸の痛みと同じように広がっていく涙の跡を、如月はただ静かに見つめていた。