• テキストサイズ

純情エゴイスト(比嘉/知念夢)

第5章 第五話


思わぬ知念の反撃に、木手は動揺を隠せなかった。
いつも自分が優位に立って、自分が思うように場を取り仕切ることに慣れている木手にとって、予期せぬ知念の言葉にはうまく対応が出来ず、言葉を詰まらせるしかなかった。

「如月が他のイキガ(男)をしちゅん(好き)になったら、やーは…」

今度は知念が木手に対して牙をむけた。
自分の想いを悟られたくない気持ちも確かにあったが、木手が意外と攻撃に弱いことを知った今、知念は彼がどこまで自分の攻撃に耐えられるのか試してみたくなっていた。
そして、万が一、如月の心が木手以外に向いた時、木手がどういった反応を、対応をするのか知りたくなった。

「…そんなことはありえない。美鈴は俺の彼女です、俺以外に目をむけるなど彼女がするはずがない…」

木手のその言葉には、彼の願望も含まれていた。
自分以外の男を好きにならないでほしい、自分の事だけを見ていて欲しい。
それは逆に、木手が満たされていないことの表れでもあった。
如月は本当に自分のことを好きでいてくれているのか、木手はどこか自信が持てないでいたのだ。
自分ばかりが彼女の事を好きでいるような気がしてならなかったのだ。

「じゃあ、ぬーんち(何で)、わんと如月の仲を疑うんば?如月のこと信じてねーんだば?」
「……信じていますよ………信じ、たいです」

悲痛な表情で絞り出すような声でそういう木手に、知念は同情を禁じ得なかった。
如月は一体どんな気持ちで木手と付き合いを続けながら、知念に対して気のあるような素振りを見せるのだろうか。
如月に対して苦しい想いを抱いているのは知念も同じだったが、目の前で苦しそうな切なそうな顔をする木手が不憫に思えてならなかった。

「えー!(おい!)お前ら何してんだ!とっくにチャイムは鳴っただろうが!」

降り注ぐ日差しの中立ちすくんでいた二人に怒声が浴びせられた。
二人が声のした方に目をやると、ズンズンと音が聞こえそうなくらいの勢いでこちらに向かって来ている、テニス部監督の早乙女晴美の姿があった。

「堂々とこんなところでサボりとはいい度胸だな?お前ら!」

手にした竹刀を激しく地面に叩きつけながら、早乙女は木手と知念を交互に睨み付けた。
/ 159ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp