第21章 第二十一話
何か重大な欠点があったわけじゃない。
ただ、何か。
パズルのピースがうまくはまらないように、かみ合わない部分があった。それだけだ。
知念と如月の場合は、それがピタリとはまった。
それだけなのだ。
「私の分まで幸せになって、なんて綺麗事言うつもりは無いよ。だけど、これだけ周りの人間を傷つけておいて、当の本人達が結局結ばれないってのは、私許せないの」
「七海ちゃん……」
「さっきも言ったけど、身を引いたんじゃないから。私だって、知念君のこと、好きなんだから。それでも、知念君はあんたを選んだんだよ! 私の入る隙なんてないんだよ! 分かってよ、美鈴」
七海の声は次第に涙声になっていった。震えるその声に如月もつられて目の奥がじんと熱くなってしまう。
七海も如月も、唇を噛みしめたままお互いの顔を見やった。
「……試合が終わったら、ちゃんと知念君と話して」
「……分かった」
涙声になりながらも、七海は最後まで涙をこぼすことなく如月の前から去って行った。
かつての親友の後ろ姿を見ながら、如月は七海が望むように知念と付き合うことが本当に最良の選択なのかどうか、思い悩んだ。
確かに知念と再会を果たした昨日、ようやく結ばれるのだと如月は思った。
そこで七海と知念の関係を知り、今度こそ知念のことは忘れてしまおう。そう決意したはずだった。
なのに、七海はもう別れたから知念と付き合えと、半ば脅しのように迫って来て。
自分や知念の気持ちはどこか置いてけぼりにされているような気がして、如月は釈然としなかった。
付き合うかどうか決めるのは、自分達自身のはずなのに。
けれどそんなことを口に出来る資格は自分にはないと、如月は思った。
七海の言う事も最もなのだ。長い間人を振り回しておいて、はいさようなら、なんて虫がよすぎる。
自分がどうしたいのか、どうするのがいいのか。
如月は見えない正解を求めて、ぐるぐると考え続けていた。