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純情エゴイスト(比嘉/知念夢)

第21章 第二十一話


奇跡的な再開を果たした2人を、結びつけるのが自分の使命だと、七海はどこか自負しているところがあった。

傍から見れば、自分の彼氏を他の誰かとくっつけようとするなんて馬鹿げた話だと思われるだろう。
しかし、七海は目の当たりにしてしまっていたのだ。

知念と如月のこれまでと、何年経ってもお互い変わらぬ想いを抱いている2人の姿を。

「神様はチャンスをくれるかもしれない。けど、そのチャンスはいつまでも待ってはくれないよ。知念くん、私、もう決めたから。その決意を、知念くんに聞いて欲しいの」

七海の言葉が届いたのか、ようやく部屋の扉が開かれた。
扉から顔を覗かせた知念の目は、力なく翳っているように見えた。

部屋に入ると、知念は何も言わず奥の窓際に置かれたベッドに腰掛けた。七海も後に続いて、知念の隣に腰掛ける。

「……わっさん(悪い)。ちゃんと話をしないと、とは思ってた」
「……うん。分かってる。今までずっと、1人で悩んでたんでしょう?」

七海の言葉に、知念は力なく頷く。
いつにも増して丸くなった知念の背中に、彼がどれだけ思い悩んでいるのかが現れているように七海には思えた。

そんな彼のそばにずっと寄り添っていられたら。どんなに幸せだっただろうか。

けれど、あの瞬間。
知念が如月の姿を見つけて走り出した、あの瞬間に。
その幸せは脆くも崩れ去ってしまったのだ。

このまま知念の心の奥底に住み着いた如月の姿に目を瞑って、偽りの幸せの上で暮らしていくことは、七海にとって耐えがたいことだった。

「もう、悩まなくていいんだよ知念くん」

七海の声音には彼女の強い意志が感じられた。
それを感じ取ったのか、それまで床を見つめるばかりだった知念がようやく顔を上げて、七海を見た。

「知念くん。今日で、お別れしよう。ただの同級生に、戻ろう」
「柊、でも、」
「…でも? 知念くんの中でも、もう答えは出てるはずだよ? …ただ優しいから、踏み出せないだけで」
「……優しくなんかない。俺は傷つけてばかりだ。お前のことも…あいつの、ことも」
「そうだね」

ハッキリと言った七海に、知念は少し驚いた顔をして彼女を見た。

「私、すごく傷ついた。だっていつまで経っても知念くんは美鈴の事を見てるんだもの。もう疲れちゃったんだ、そういうの」
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