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純情エゴイスト(比嘉/知念夢)

第21章 第二十一話


言葉少なに尋ねる木手に、知念はゆっくりと頷いた。素直に答えた知念に少しばかり驚いた木手だったが、それならば話は早いとも思った。

「だったら、納得できるまであがくべきでは?」
「……でも、如月は…あいつはそれを望んで…」
「それで、諦められなかったのでしょう。だからあんな酷い試合になった。知念クン、キミもいい加減ケリをつけるべきだ」

木手の言葉は最もだった。最もだったが、知念はどうにも動けないでいた。
自分を支えてくれた柊に別れを告げることも、長年想ってきた如月を忘れることも、どちらも出来ないまま、ぐらぐらと揺れる気持ちを抑えるので精一杯だった。

「もう一度、よく考えた方がいい。ここで彼女に再会した意味を、もう一度」

それだけ言って、木手は踵を返して部員達の元へ歩んでいく。木手の背中越しに、平古場や柊と目が合う。二人とも何か言いたげな目をしていたが、知念のそばに来ることは無かった。

自分がどうしたいのか、どうするべきなのか。
柊を傷つけてでも如月の元へ向かうべきなのか。
如月のことを綺麗さっぱり忘れてしまうべきなのか。

誰が答えを準備してくれるわけでもない。
自分自身で答えを出さなければならない。

簡単には答えは出なさそうだったが、逃げずに向き合おうと、知念は自分の心と向き合うことにしたのだった。

******

「なぁ、寛と如月どうなったんだ?」

ホテルに戻っても部屋にこもってばかりで食事の時間だというのに姿を見せない知念を気にして、田仁志は平古場にそう尋ねていた。
昔話に出てくる山盛りのご飯のように、そびえたつ大盛りのご飯が田仁志の茶碗からみるみると消えていくのを目にしながら、平古場は静かに首を振った。


「知らね。…けど、上手くはいかなかったんじゃないか」
「はー…そうかぁ。いや俺はてっきりあの二人くっついたと…」
「しー! …柊もいるんだぞ」
「あ……そうだったな」

田仁志の不用意な発言に、平古場は鋭く田仁志を睨んだ。知念の現彼女である柊は、テニス部のマネージャーとして同じホテルに宿泊していた。
今も木手と同じテーブルで夕食をとっているところだ。
平古場達の席と少し離れているとはいえ、あまりこの話題を彼女の耳に入れることは、平古場はしたくなかった。
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