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純情エゴイスト(比嘉/知念夢)

第21章 第二十一話


二回戦が始まる直前に、ようやくコートに姿を現した知念を部員達は心配そうに見ていた。
平古場はじめ如月とのことを知っている者たちは皆、知念と如月がどうなったのか一様に気にしていた。

ただ、どうなったか本人に聞ける雰囲気では無い事は誰の目にも明らかだった。
どうも良い方向には転がっていないようで、当の知念はいつにも増して暗い顔をしている。

試合が始まっても、調子の上がらない知念に、ダブルスペアの平古場はいつも以上にコート内を走り回った。知念のミスをもう何度カバーしたか知れなかった。

コートチェンジになると、知念は下を向いたまま黙って移動を始めた。

(寛の不調の原因はハッキリしてる。絶対に如月の事やんに。…寛の事だから、柊の事、切れなかったんだろうな。かといって如月の事も吹っ切れない、ってところだろ)

そんな予測を立てながら、見るからに絶不調の知念の背中を平古場は思い切り殴った。遠慮なんて一つもなかった。

「痛っ!! 何すんばぁ!?」
「何すんばぁ、じゃねーし! やー、今余計な事考えるな。 今は試合中やし」
「…わっさん…」
「もうフォローに回るの、御免だからな」
「……あぁ」

平古場の叱咤を受けて、知念の意識は少しだけ如月から離れることが出来た。そうは言ってもすぐに調子を立て直せるわけでは無く、その後のゲームも平古場はいつも以上に走らされたのだった。

なんとか試合は比嘉の勝利に終わった。明らかに調子の悪い知念に対して、木手も複雑ではあったが忠告をすることにした。

「知念クン。少し、いいですか」
「あぁ」


部員達から少し離れた場所で、木手は知念に言葉をかけた。

「…さきほどの試合、キミ自身分かっていると思いますが、酷いものでした」
「……そうだな」
「原因は、美鈴の事ですね」
「……あぁ」


木手にとっては、知念と如月がどうなったのかはそう問題では無かった。結果はどうであれ、二人が納得したのならそれで良いと思っていた。

大方、この二人の事だから、またすれ違いでも起こしたのだろうと木手は薄々感じていた。

「…キミは納得していないんでしょう?」
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