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純情エゴイスト(比嘉/知念夢)

第20章 第二十話


平古場は言いかけて言葉を詰まらせてしまった。こんなものじゃ足りない、もっと罵りの言葉を如月に浴びせなければ、そんな気持ちでいっぱいだった平古場を制したのは、平古場よりももっと文句を言いたいはずの知念と七海だった。

平古場がなおも口を開こうとすると、七海がそれを見て静かに首を振る。眉根を寄せたまま平古場が七海の目を見ると、彼女は平古場に目で訴えた。『もう何も言わないで』と。

押し黙ってしまった平古場に対して、今度は如月が静かに口を開き始めた。

「…酷いことをしたのは、分かってる。知念君も、七海も、傷つけて…自分の事しか考えずに今まで生きてきたって、分かってる……でも、私、ずっと忘れられなくて…」

如月の言葉は、平古場にとって言い訳にしか聞こえなかった。如月の身に起きたことはこの上なく辛いことであったし、その心中は察するに余りあった。それでも、それを言い訳に、知念を、七海を傷つけ続けたことを平古場は許せそうになかった。

「忘れられない?! だったら連絡の一つくらい寄越せよ!! メールの一つくらい出来ただろ?! 今更現れて、忘れられないってなんだよ? もうな、お前の居場所なんか…」
「もう、いいじゃない平古場君! …そんな怖い顔、もう止めて。これで知念君と美鈴、ようやく落ち着くところに落ち着けるんだからさ」

激高する平古場を、七海が声を張り上げて止めた。七海の勢いに、幾分か平静を取り戻した平古場だったが、七海が続けて放った言葉にまた平古場は平静さを失いつつあった。

「おい待てよ、柊。やーは…」
「平古場クン。知念クンにも話をさせないと。…俺達は席を外しましょう」
「永四郎、邪魔さんけー! やーに色々あったのは、知ってる。それでもやーの気持ちは分からん! 分からんから俺は言う! なんで今更顔見せんだ!?」
「…それは…」

平古場の言葉に、如月はすぐに言葉を返せないでいた。平古場の剣幕に押されたものあった。それに平古場の言う通りだと思う心が、如月の中にもあったのだ。
何故自分はここにいるのか。如月はいまだ自分の中でも答えを出せないでいた。

「やーは前もそうやったし! 永四郎と付き合ってるかと思いきや寛の方にフラフラと……中途半端なことをするなら、いっそのこともう関わるな!」
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