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純情エゴイスト(比嘉/知念夢)

第20章 第二十話


コートの中の知念は、中学の時より一層強くなっているように見えた。長い手足を生かしたストロークは球速を速め、相手のコートに突き刺すようにボールを送る。
かろうじて相手が打ち返したボールになんなく追い付き、大きく空いたスペースへとまた打ち返した。
素早い返球に、知念と平古場の対戦相手はボールを追う気力をくじかれた様で、その場でボールの行方を目で追うだけだった。

「…強いね」
「強いよ。今年は最後だから。みんな、意気込みが違うの」

試合はあっという間に決着がつき、知念達の勝利に終わった。その後の試合も比嘉は勝利を重ね、なんなく二回戦進出を決めたのだった。

試合が終わって、如月と七海は比嘉の皆の元へ合流することにした。如月はみんなに合わせる顔がない、と行くのをためらっていたものの、七海に押し切られる形で皆の元へ連れて行かれた。知念だけでなく、木手に対しても、きちんと顔を合わせるべきだと七海は思っていたから、多少無理をしてでも如月を皆の元へ引っ張って行った。

七海に連れられた少女の姿に、比嘉の部員達は皆一様に驚いた顔をしていた。先ほど知念が名を叫んで飛び出して行った姿を見ていたものの、まさか本当に如月がこの場にいるとは皆思ってもみなかったのだ。

様々な思いが皆の胸の中に去来する中、一番に口火を切ったのは平古場凛だった。平古場はひどく険しい面持ちで、如月の顔を睨み付けている。会ってすぐにそんな顔をされて、如月はたじろいでしまった。

「…今更、何しに来たんばぁ?」

彼が如月のことを快く思っていないことは、その表情だけでも十分伝わってきた。威圧感のある平古場の語気に、ひしひしと彼の心情が表情以上に伝わってくる。静かな物言いのはずなのに低い声音は、如月が目を伏せてしまうのも仕方が無いくらい、怒気を感じるものだった。

「どのツラ下げて、ここに来た?」
「ちょっと平古場君! そんな言い方は止めて。…私が無理矢理ここに連れて来たんだから」
「柊が連れてきたにしても、ノコノコ付いてくるってどんな神経してるんばーよ!やーのせいで、どれだけこいつらが…!」
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