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純情エゴイスト(比嘉/知念夢)

第20章 第二十話


どんなに好きという気持ちがあったとしても、ここまで酷い仕打ちをされたら、気持ちが冷めきってしまってもおかしくないのに。

ボロボロと零れ落ちる涙をぬぐうこともせず、如月はじっと知念の目を見つめ、彼の返答を待った。

「じゅんにな。やー、酷いよな。俺がどれだけ傷ついたか」

その知念の言葉に、如月の眉はぐっと下がり、申し訳なさそうな顔になった。
頭ではそう言われるのは当然だと分かっているのに、知念に面と向かってそう言われると辛かった。
知念の言葉は如月の胸にぐさりと刺さった。

「でも、な。それでも、やーの姿を見つけた時、体が勝手に動いたんばーよ。あれこれ考える前に」

きっと、それが答えなんだろう、と知念は薄く笑って言う。

(ああ、この人は、なんて……なんて大きな人なんだろう……)

如月は涙で滲む知念を見つめながら、彼の懐の大きさに感じ入っていた。

「おい!お前何やってんだよ!手、離せよ!」

そう大声で突然二人の間に割って入ったのは、柿谷だった。
何も事情を知らない者から見れば、如月と知念の様子は、図体の大きな男が女の子を泣かせているようにしか見えないだろう。
慌てて逃げ出した如月の姿を見ていた柿谷はなおさら知念へ不信感を強めていた。

「……やー、たーやが?(お前、誰だ?)」

知念は柿谷を脅そうだとかそういうことは全く意識していなかったが、落ちくぼんだ目がぎょろりと自分の方に向いたのを見て、柿谷の背筋には冷たいものが走った。
せっかくの如月との再会を邪魔されたことに少なからず知念はムッとはしていたが。

「うちのマネージャーをなんで泣かせてるんだよ、お前」

急に現れた第三者に、一から説明する気は知念はさらさらなかった。
けれど、この男が、如月に少なからず好意を抱いていることに知念は気が付いていた。
知念に向けられている柿谷の目は、好きな女を守る男のそれだった。

「邪魔さんけー。今、大事な話してっから」

知念は柿谷の質問には答えなかった。
それは知念なりの牽制で、その牽制は柿谷には効果絶大だった。
再びぎょろりと睨み付けられた柿谷はそれ以上知念に何も言えなくなった。
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