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純情エゴイスト(比嘉/知念夢)

第4章 第四話


「知念くん!一緒に帰ろう?」

いつものように如月は知念の元にやってきて、満面の笑みでそう言った。
けれどそこに木手の姿がないことに気付いて、知念は少し難しい顔をした。

「永四郎は?」
「今日は委員会で遅くなるって」
「…待ってなくていいんだば?」
「早く猫ちゃんに会いたいもん」

彼氏よりも猫をとる彼女に苦笑しつつ、如月に急かされるままに知念は教室を後にした。
一応永四郎に断りを入れておこうと、知念はカバンから携帯を取り出して木手にメールをいれた。

「ちーねんくん!早くー!」
「わぁーってる。あんし(そんなに)急ぐと、きっちゃきすんど(転ぶぞ)」

知念が言い終わらないうちに、如月は足をもつれさせて勢いよく地面にダイブしそうになった。
すんでのところで知念が受け止め、大事には至らなかった。

「ありがとう、知念くん」
「…言ってるそばからこれだもんな…」

恥ずかしそうに笑う如月の顔、そして肌に触れる彼女の柔らかな感触。
知念は思いがけず訪れた幸運に胸が高まった。
毎日快く家に迎え入れているのだ、このくらいのことがあってもいいだろう、と知念は言い訳がましく思った。


そんな2人を遠くから見ている人物がまた2人。

「あれ?知念と如月だよな?見つめ合ってぬー(何)やってんだ、あったー(あいつら)」
「最近仲いいよな、あぬ二人。……永四郎は?」
「…見当たらねぇな。…マジでとうとうあぬ2人デキちまったんだばー…?」

甲斐と平古場は顔を合わせて、まさか、とお互いにその考えを否定した。
あの木手が如月と別れることは到底考えられなかったからだ。
今まで見たことないくらい木手は彼女に執着している。
それにいくら知念でも木手の彼女に手を出すことは無いだろう。
友人といって差し支えない間柄の彼女を奪うほど、彼は愚かではないはずだ。

「でも…あぬ2人、結構お似合いだな」

平古場のつぶやきに甲斐は複雑な思いで頷いた。
幼馴染の木手はこの2人の関係を一体どう思っているのだろうか。
甲斐は微妙なバランスで成り立っている3人の関係がいつか均衡を崩すのではないかと不安でならなかった。
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