第19章 第十九話
3人に降り注いだ太陽の光が、彼らの足元に濃い影を作っていた。
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「本当に私も行っていいのかな…?毎年男の子達だけで集まってるんでしょ?」
可愛らしいピンクのボストンバッグを手にした七海は、知念の顔を窺うようにちらりと彼を見やった。
七海の視線を受け止めながら知念は彼女の頭を優しく撫でた。
「気にすることはないさー。それに今年はみんな彼女呼んでるんど」
「ん…そうだったね…」
七海は返事をしたものの、どこか歯切れの悪い返事だった。
知念は七海が懸念していることが他にあるのだと気が付いたものの、肝心のその懸念していることが何であるかは分からなかった。
如月のように怖いものが苦手だっただろうか、と知念はふとそんなことを考えた。
それともせっかくの休みには2人きりで過ごしたかったのだろうか。
「…何か気になることがあるのか…?」
知念は率直に疑問を七海にぶつけることにした。
彼女が何を考えているのか、これから少しずつでも知っていけばよいのだ。
焦る必要はない。と知念は自分に言い聞かせて、七海の言葉を待った。
「う、ん…と…。…ううん、なんでもない。あっ、私ね、すっごく怖い話練習してきたんだよ!きっと寛君も怖いと思うはず!」
かぶりを振って七海は知念の質問には答えず、わざと明るい声で話題を変えた。
知念は七海の気持ちに踏み込むべきか悩んだが、これから待っているきっと盛り上がるだろうイベントのことを考えて、それに水を差すような真似はやめよう、と考えて、それ以上七海を追及するのを止めてしまった。
七海は知念がそれ以上何も言ってこないことにほっと安堵していた。
彼女の心の内に浮かんでいたのは、今の知念に一番忘れておいて欲しい、如月のことだったからだ。
知念と親しかった如月のことだから、一度くらいこの怪談パーティーに参加したことがあるのでは、と七海は思っていた。
自分の知らない如月と知念の過去がそこにあるような気がして、七海の胸はちくりと痛んだ。
けれど、今、知念にそれを確認したからといって、何が変わるわけでもない。
むしろ如月の名前を口にしてしまえば、せっかくの楽しい雰囲気が台無しになってしまうだろう。