第19章 第十九話
じりじりと焼けつくような日差しに、暑さには慣れている平古場も思わず、あちぃ、と呟き、手をかざして自身の顔に小さな日影を作った。
地面から立ち上る熱気に顔をしかめてのろのろと歩みを進める。
こんな日は早く家に帰って涼しい部屋の中でゴロゴロするのが一番だ。
平古場は家の冷凍庫の中にあるはずのアイスを思い浮かべて、家路を急いだ。
「おっ?」
少し先に見知った後ろ姿を見つけて、平古場はその後ろ姿に駆け寄った。
足音に振り返る顔はいつもと同じ仏頂面だった。
「寛、やー、とうとうくっついたんばぁ?」
にやにや笑いながら平古場が知念を肘で小突く。
知念はそれを軽くかわしながら、隣にいる七海にちらりと視線をうつした。
平古場の言葉に恥ずかしそうにうつむく七海の顔は、耳まで真っ赤になっていた。
その初々しさに平古場はさらに二人をからかってやろうと口を開きかけたが、知念に反撃されてしまった。
「凛は今日は彼女と一緒じゃないのか?」
うっ、と言葉につまって平古場は苦笑いした。
「また別れたのか?」
知念の言葉に平古場はバツが悪そうにそっぽを向いて、まぁな、と答えた。
「また」と知念が呆れたように言うのも無理はなかった。
高校に入学してから平古場は短いスパンで彼女が出来ては別れを繰り返していたのだ。
別れてもすぐ次に移れる平古場に知念はある意味感心していたが、自分もそうなりたいとは思わなかった。
「ちぃーっとばかし、気が合わなかったんだよ」
「そうか」
「って、俺の事はいいんだよ。寛、彼女紹介してくれよ」
ちらりと知念の隣でうつむく七海に目をやると、パッと顔をあげた彼女と目が合った。
顔は真っ赤なままだったが、視線はまっすぐに平古場に向けられていた。
どことなく如月に似た雰囲気に、知念が惹かれた理由が平古場には分かるような気がした。
「ひ、柊七海です」
「七海ちゃんって言うのか。いつも試合応援に来てたよな、寛の」
「は、はい」
「な、な、寛のどこが良かったわけ?」
「えっ…そ、それは…」
また恥ずかしそうにうつむいてしまった七海に、平古場はからかいがいのあるおもちゃを見つけたように嬉しそうに笑った。
七海の隣で話を聞いている知念は、はぁ、と呆れた顔で平古場を見ていた。