第3章 【岩泉 一】こちらはビター仕様になっております
あれは1か月前のこと。
私が教室に戻ろうとすると、廊下に及川と岩泉。そして、後輩の女の子が立っていた。
「及川先輩、岩泉先輩。これ作ったんですけど、良かったら食べてください!」
彼女が差し出したのはクッキー。可愛くラッピングされた、可愛らしいクッキー。
それを嬉しそうに受け取った岩泉と目が合った。
私はそんな岩泉と一緒に教室に入り、岩泉の席の前に座った。
「へぇ。岩泉って意外とモテるんだね」
「おい、どういう意味だよっ!」
岩泉はそう言って、クッキーを口に持って行った。
うまい。そう言って、もう一つクッキーを取り出して私の方へ差し出した。
「お前も食う?」
「・・いいよ。せっかく岩泉のために作ってくれたやつじゃん?」
私が断ると、岩泉はハハっとそのクッキーを眺めた。
「まぁ、及川のついでだろ?」
あいつのどこがいいんだか。とため息をつきながら、口の中にクッキーを放り込んだ。
「岩泉って、お菓子とか甘いもの好きなの?」
「ん?まぁ、嫌いじゃねぇよ?それに、手作りのお菓子をもらって喜ばない男はいないだろ?」
「そんなもん?」
「そんなもん」
岩泉が美味しそうに食べるクッキーを見つめながら、なんだかモヤモヤする気持ちを誤魔化そうとおちゃらけて見せた。