第3章 【岩泉 一】こちらはビター仕様になっております
「一生のお願い!!!私にお菓子の作り方教えてくださいっ!!」
ドサッと先日買い漁ったレシピ集を机の上に置いて、両手を顔の前で合わせた。
「どうしたのよ、急に・・・」
友人は机に置かれたレシピ集をペラペラめくりながらため息をついた。
「こんなに買っちゃって。・・で?誰にあげるの?」
「いや・・自分で?食べる・・的な?」
私がおちゃらけて笑うと、友人はレシピ集をパタンと閉じて机の上に置いた。
「ふぅ~ん。そっちがそうなんだったら、教えないっ!」
「わぁ!ごめん、ごめん!話すから、話すから見捨てないで!!」
「まさか、ひろかが岩泉をねぇ~」
放課後、私たちは屋上に上がり、今回の経緯を話した。
「ちっ、違うよ!その友達として!!だって、及川ばっかもらってたら可哀想じゃん」
バレンタインに岩泉に手作りお菓子を渡したい。
けど、私は本当に不器用でお菓子なんて作れたためしがない。
友人に頼るしかないのだ。
「ははーん。この間の後輩の子が差し入れしたクッキーが原因でしょ?」
うっ・・。確信を突かれ、私は身体を縮めた。