第7章 【照島 遊児】お前がいないと楽しくない
スーパーを出て、ビニール袋からさっきのチョコを取り出す。
「これ・・どーすんだよ」
俺はとりあえずひろかの家の方へ向かった。
家の前に着いたはいいけど、これからどうするのか。
今さらこんなチョコをもらってもひろかは困るだけだろうし。
ポストの中に入れておけば問題ないか?
そんなことを考えていると玄関の扉が開いた。
「・・あれ?確か君・・ひろかの同級生?」
玄関から出てきたのは、以前ひろかと一緒に歩いていた男だった。
「おぉーーい!ひろか~!」
その男は一度家の中に入ってひろかを呼んだ。
バタバタという足音が聞こえた後にひろかの声が聞こえた。
「何?大きな声出して。・・遊児!?なんで・・?」
「あっ・・いや、ちょっと渡したいもんがあって・・」
俺がそう言うと、ひろかは玄関から出てきて、さっきの男を家の中に押し込んだ。
「・・何?渡したいものって・・」
ひろかは目を合わせずに俺にそう言った。
俺はスーパーのビニール袋から、さっき買ったチョコレートを取り出した。
「去年のホワイトデー、何も返してなかったから・・」
俺がチョコレートを手渡すと、ひろかはジッとそれを見つめていた。
「・・なんか言えよ」
「えっ・・あっ・・そうだね。・・うん」
ひろかはまた黙ってしまった。
「いや、迷惑なら別にいいから。・・ほら、お前もう彼氏いるんだろ?だから・・その・・」
俺が手渡したチョコレートを取り返そうとすると、ひろかは箱を開けてクマのチョコレートをパクリと食べた。
「ねぇ、遊児。私ね、ストロベリー味のチョコ好きじゃないんだよ?」
「・・はっ!?だってお前毎年美味しそうに食べてたべ?」
「遊児がくれるチョコだし。・・それに私がピンク好きだからって買ってきてくれたのが嬉しくて・・」
そう言ってひろかはまたストロベリー味のチョコを食べた。
「嬉しかったの。遊児が私のことを見ててくれたんだって。好きな色を把握してくれてたんだって。だから、好きじゃないけど、すごく嬉しかったの」
「ひろか・・」
へへと笑うひろかを見て、俺は押さえつけていた想いを吐き出した。