第7章 【照島 遊児】お前がいないと楽しくない
「ひろか。もう遅いって分かってるけど、俺やっぱりお前と別れたくない。いつもひろかのこと泣かせてばっかだったけど、やっぱりひろかがいないと俺ダメだ。・・ひろか、俺ともう一回付き合って・・く・・れ」
「ちょーっと待った!!」
バタンと言う音が鳴って俺が顔を上げると、ひろかはさっきの男に手を引かれて玄関前に戻されていた。
「ただの同級生くん。俺のひろかに手出さないでくれる?」
そう言って、ひろかは家の中へ連れ去られてしまった。
それから数時間。俺はひろかの家の前でずっと彼が出てくるのを待っていた。
ちゃんと彼と話をして、正々堂々とひろかを好きでいると言いたかった。
「うわぁ・・雪だ・・」
あっという間に夜になって、空からは雪がちらちらと降り始めた。
真っ暗な空から真っ白な雪。
それがとてもキレイで、引き込まれそうになる。
「・・くしゅん。やっべぇ。さすがに寒い・・」
久しぶりの雪だったせいか身体は冷え切って、震えが止まらなくなっていた。
ガチャ
「遊児?寒いから帰って?風邪ひいちゃう・・!」
ひろかはそう言って家から持ち出してきたひろかのマフラーを俺の首に巻いた。
「お兄ちゃん、今お風呂入ってるからこっそり出てきたの」
「・・お兄ちゃん!?」
「うん。お兄ちゃん」
「はっ!?お前の新しい彼氏じゃねーの?つーか、お前兄ちゃんいたの?」
中学からひろかと付き合っていて、何度かひろかの家にも行ったけど兄弟なんているような感じはなかったし、ずっと一人っ子だと思っていた。
「お兄ちゃん、年も離れてるし高校から県外の寮がある高校に行っちゃったから、遊児会ったことなかったよね」
なんだか力が抜けて俺はストンとしゃがみこんだ。
するとひろかも一緒にしゃがみこんで俺を見つめた。