第4章 【東峰 旭】義理チョコ、へなちょこ、本命チョコ
軽くなったカバンを持ち直して歩き出す。
カバンは軽いはずなのに、身体は重りを付けられたかのようだった。
「えっ!?もらってないの?」
ふと、声がする方を見ると、そこには東峰達が話し込んでいた。
「なんだよ、旭!あんなに自信満々だったのに、チョコ0個かよ~」
「・・あぁ、うん」
肩を落とす東峰に菅原がニヤリと笑って口を開いた。
「じゃぁ、旭罰ゲームなっ!」
「行って来い、へなちょこ」
二人にドンッと背中を押され数歩進んだ後、ゆっくりと足を動かしながら徐々に駆け足になってこちら側に向かってきた。
まずい。そう思い私は咄嗟に校舎の陰に隠れたけれど、あっけなく見つかってしまった。
「・・佐藤?なっ、何してるの、こんな所で?」
「いや・・別に・・。東峰は何で罰ゲーム?チョコもらってたじゃん・・」
「えっ?・・あぁ、あれはスガに渡してくれって言われて受け取っただけで」
「そうなの!?・・私てっきりもらえたんだと思って・・」
私は捨ててしまったゴミ箱の方へ目を向けると、東峰はまさか・・とゴミ箱の蓋を開けてゴミの中に腕を突っ込んだ。
「ちょっと!汚いよ!!止めなよ!!!」
私は力いっぱい東峰を止めたけど敵うはずもなく、東峰はどんどんゴミを避けて私のチョコを掘り出した。
キレイにラッピングした箱はすっかり汚くなっているのに、東峰はすごく嬉しそうに眺めていた。
「開けてもいい?」
「えっ?食べるの?ゴミ箱に入ったやつだよ?」
「・・でも、せっかく佐藤が作ってくれたんだし。それに中身は大丈夫だろ?」
そう言って、東峰はラッピングを丁寧に開けた。
「待って!・・手、汚いでしょ?」
私はそう言って、箱の中から一つのトリュフを摘まんで東峰の口元へ持って行った。
東峰は少し動揺していたけど、ゆっくり口を開けたので私はそこへ放り込んだ。
「・・・うまい!これ、美味しい!!」
「よかった。・・あっ、これで罰ゲームしなくて済んだでしょ?二人に報告してきなよ?」
私はもう帰るね。と東峰に手を振って背を向けた。