第4章 【東峰 旭】義理チョコ、へなちょこ、本命チョコ
バレンタイン当日。
そわそわしている東峰がすごく可愛かったから、ついついイジメたくなってしまった私はチョコを渡す素振りなんか見せずに1日を過ごしていた。
昼休み。私はどのタイミングで渡そうかと考えながら中庭を歩いていると、東峰の声が聞こえてきた。
校舎の陰から覗くとそこには1年生らしき女の子が東峰にチョコを渡していた。
「・・・良かったじゃん。本命チョコもらえて」
私は飲みかけのジュースをズズズと音をたてながら飲みきりゴミ箱へ捨てた。
放課後、私はそそくさと教室を出た。
ふと、自販機の横のごみ箱が目に入ってカバンの中に入っていたチョコレートを取り出した。
「もういらないね、これ」
ガタン。
冷たい音が鳴って、チョコレートはゴミ箱の中に落ちて行った。
ただ、東峰が罰ゲームをしなくて済むように情けであげるチョコなのに、何を気合入れて作っていたんだろう。
東峰も東峰だよ。人にチョコもらう約束しておきながら他の子からもらうなんて。
いや、違う。東峰は悪くない。
ゴミの中に沈んでいくチョコレート。
それが何だか今の自分みたいで、私はゴミ箱に背を向けた。
「バカみたい・・」