第2章 三毛猫みーこちゃん
「ああ」
十分予想できた質問だったが、凛は少し赤面した。
それを誤魔化そうと凛はみーこの喉を軽く撫でる。
「そうなんだ。あたしだったらしらすって付けるのになー」
「そこかよ」
予想外の返しに凛は思わず拍子抜けした。
ゆるい、ゆるすぎる。
つーか、しらすって何だよ。
「でもどうしてみーこなの?あたしのあだ名と一緒だね」
きた、と思った。
本当のことを言ってしまおうか、いやしかし恥ずかしい。
事実を言うか否かで迷う凛はあえて仏頂面を作った。
「三毛猫だからだ」
「そのまんまだね。でも鮫柄の寮って動物飼っていいの?」
「今は使われていない旧校舎で飼ってる」
三毛猫だからみーこちゃんね...と汐は呟いた。
そしてふっと意味ありげに含み笑いをしながら凛を見つめた。
「ね、ほんとにそれだけ?」
「っ...!雨の日に行き場がなさそうにみーみー泣いてたから...っ」
「みーみー鳴く三毛猫だからみーこちゃんね」
絶対こいつ信じてねぇ、と凛は舌を巻いた。
勘が鋭いというべきか。
それとも凛の嘘が下手なのか。
「...凛くん、なにか他に理由がありそうだなってあたし、思うんだけど。どうかな?」
「うっ...!」
りーんくん、と汐は上目で問いかける。
本当の理由はかなり小っ恥ずかしいものだったから、出来ることなら汐にだけは言いたくなかった。
しかしそれも無理そうだ。
「...お前そっくりなんだよ」
「え?」
消え入りそうなほど小さい声で呟くように語り出す。
よく聞こえなかった汐は聞き直した。
「だってこいつ、拾ってきてすぐ懐くし、白と黒と茶色だし、ちっせぇし目でけぇし、こいつ見てたら白と黒と制服に茶色の髪で人見知りしねぇチビなどっかの誰かさんにしか見えなかったんだよ!おまけに試しにみーこって呼んでみたらすげー気に入ったみたいで他の名前受け入れてくれねぇし!仕方ねぇだろ!!」