第2章 三毛猫みーこちゃん
恥ずかしさで顔を赤らめながら早口で捲し立てるように凛は言った。
猫の名前の由来になった本人にこの話をするのは恥ずかしすぎる。
すべて言い切った凛は口をへの字に結びながら汐を見据えた。
汐は何も言わない。
逆になにも言われない方が恥ずかしいと汐を詰ろうとした。
しかし次の瞬間、汐はなにかの糸が切れたかのように笑い出した。
「っあはは!!」
「なっ...!笑うな!」
思わず立ち上がりかける。
汐は1人で腹を抱えながら笑っている。
凛は恥ずかしさに耐えられないという風に手の甲で口元を隠す。
「っははっ!だってそれって、凛くん可愛すぎっ...!ははっ...!」
「うるせー可愛いとか言うな笑うな!」
目に涙を浮かべるほど笑いやがって、このやろー。
そう文句を言いながら凛は両手で汐の両頬をつねる。
「いひゃい、いひゃいー」
はにゃひてよー、と汐の目がキツネになる。
「笑うな!」
汐の頬をつねる手を離す。
凛の紅潮した頬を汐の手が包み込む。
そしてそのまま凛にキスをした。
チュッと軽く唇が触れる程度のキスだったが、凛の心臓はバクバクと脈打っている。
こうして汐からキスをしてきたのは初めてだった。
「凛くんほんと可愛い。それに優しいね」
汐はそう言って微笑んだ。
初めて汐に負けた気がした。
「可愛いとか言うなよ」
「凛くん照れてるね」
「うっせ」
黙れ、と凛は汐の口を物理的に塞いだ。
今度のキスはまろやか練乳仕立てフルーツオレの味がした。
汐の膝の上は自分の居場所といわんばかりにみーこはうたた寝を始めた。
実は凛がみーこを拾ったのは、まだ汐と付き合う前の出来事であった。
気づいてるのか否かはわからないが、凛はそれについて汐が触れなかったことにこっそり安堵した。