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Affectionate Photographs

第9章 手を差し伸べてくれたのは


「!?」

扉を開けて部屋に入るなり、パァン、という大きな破裂音と共に色とりどりのきらきらしい銀テープと紙吹雪が夏貴に降り注いだ。

「夏貴!鮫柄にようこそ!!!」
そこには似鳥を始めとした先輩部員がみな集結し、クラッカーを手にして笑顔を浮かべていた。

「…、えっ?これは…」
銀テープにまみれながら状況が全く呑み込めずに目を白黒させている夏貴へ、我先にと2年部員が声をかけた。

「見りゃ分かるだろ!今更だが、お前の歓迎会だよ!ちょっとしょぼいかもしれねぇけど」
「歓迎…。僕てっきりこれから詰められるのかと思ってました」

よく見たら、まだ片付いていない似鳥の机の上に包装された洋菓子のタワーが建設されていた。その隣には冷たいまろやか練乳仕立てミルクセーキも洋菓子タワーと同じ高さまで積み上げられている。
見事に全て夏貴の好物たちだ。しかし何故まろやか練乳仕立てミルクセーキが好きだと知られているのだろう。誰かに言った覚えはない。

「詰める?俺たちが?なんでだ?」
その考えは全く無かったのだろう。その場にいる全員がきょとんとしている。

「いやその…僕、凛さんに対して当たりが強いから…」
見当違いも甚だしい想像をしていたのは自分だけだったと思い知った夏貴は目を逸らし赤面しながら消え入りそうな声でそう言うと、きょとんとしていた部員たちは一斉に大笑いし始めた。

「自覚あったのかよ!まぁでも、そりゃそうだよなー。あんなに可愛いお姉さんを部長に取られたんだから、そりゃむかつくよなー!」
分かるぜその気持ち、と茶化しながら肩を組んでくるのは2年の魚住拓也。
彼に同調して同じく2年の美波一輝も反対側から肩を組んでくる。

「逆にあの部長に対して、あそこまで踏み込めるのは夏貴だけだから俺ら見てて楽しんでるんだぜ?こないだの夕飯の椎茸をしれっと部長の皿に乗せてたのなんか傑作だったな!」
「椎茸のことは忘れてください…」
椎茸が嫌いで凛の皿に移すという子どもじみた行動を見られていただなんて、顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。
思わず両手で顔を覆う夏貴。

「詰めるだなんて誰も考えてもなかったから安心しろ!」
岩清水透も豪快に笑って夏貴の肩を叩く。

「痛っ!ちょっと、痛いです…」

羞恥心も落ち着いたところで、改めて夏貴は切り出した。

「でも、どうして急に歓迎会なんて…」
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