• テキストサイズ

Affectionate Photographs

第9章 手を差し伸べてくれたのは


「誰かの為に何かをしたいって思う気持ちと、凛の言う自分の願望を押し付けっていうのはいつだって紙一重よ」
難しいところね、と都は目を細める。

「だけどね、凛の気持ちは絶対に汐ちゃんに伝わってるから、大丈夫」
都は江と一緒にテレビを見ている汐の方へ目をやった。
凛もそれを追うように汐へ目を移す。

そこには楽しそうに江と笑う汐の姿。
テレビに映る立派な筋肉に大興奮してる江とは対照的にスティーブと遊びつつ冷静に筋肉のポイントを解説している。
それはいつも凛が目にする自然な笑顔で、1番好きで守りたい表情がそこにはあった。

「凛はきっと、あの笑顔でいてほしいのよね」
「ああ」
汐の誕生日の時も思ったが、凛は同年代でも珍しいくらい家族に対して恋愛を恥ずかしがらずにオープンにしている。
都の記憶では、好きな人の話をとても恥ずかしがっていた小学校時代の印象が強かった。
奥手は克服したのかもしれない。
汐と出会って恋に落ち、凛なりに汐を守って引っ張っていってあげたいと思ったのだろう。
この先末永くずっとずっと汐のことを大切にしていくのだろうと、母は息子の成長を思うと本当に嬉しい気持ちでいっぱいになった。

「汐ちゃん、江、お待たせ。ご飯にしましょ!」
「はーい!」
「ありがとうございます」
都に呼ばれると江と汐、一緒にスティーブも反応した。

松岡家は食事の定位置が決まっているようだ。凛も江も迷わず食卓につく。その流れで汐は空いていた凛の隣へ座った。ここはきっと凛の父親の席だったのだろう。

食卓に並んだのは、ご飯に大根と油揚げの味噌汁、鰆の西京焼き、筑前煮、ほうれん草のおひたし。
自分ひとりが食べるためにはまず作ることがない一汁三菜揃った和食。

「すごい…」
思わず汐は素直な感想をこぼした。
スティーブのご飯皿にカリカリをなみなみと入れながら都は、凛と汐ちゃんが来るし張り切っちゃったと茶目っ気たっぷりで笑う。

「とっても美味しそうです」
汐も笑顔を浮かべながら、横目で嬉々としてなみなみのご飯を食べるスティーブのまんまるなお尻を見た。どうしてスティーブがわがままボディなのかわかった気がした。

「いただきます」
都が席につくと、江と凛が手を合わせ箸を取った。
汐もいただきます、と手を合わせると遠慮がちに箸を取る。

「遠慮なく食べてね!」
「はい、ありがとうございます」
/ 67ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp