第8章 Birthday Night ※
じゃれる動物のように頬を擦り合わせるふたり。
頬を離すと、ちゅっと可愛らしいキスをした。
啄むようなキスを繰り返していくうちに、段々とキスの時間が長くなる。
ゆっくりと柔らかく溶けるキスを味わった後、唇を離し、見つめ合う。
この瞬間が好きだ。
しん、と静まり返っていて、心臓の音が凛に聞こえてしまいそう。
甘い空気が流れているのに、ふたりを繋ぐ糸はぴんと張られている。
どちらかが動けば、あとは解れていくだけ。
先に動いたのは、凛だった。
「ん…っ」
斜めに唇が重ねられ、舌が割り込んでくる。
ゆっくりと舌が絡まり、微かで淫らな水音が立つ。
「凛くん…電気消して?」
「ああ」
吐息のかかる近さ、囀り程度の声で短い会話をする。
凛が電気を消すと、部屋は間接照明の明かりのみとなった。
「…」
「…」
長いようで短い沈黙。
今度は汐が、その静寂を破る。
「凛くん…好き…」
〝抱いて〟
とは言えず、代わりにこの言葉に込める。
色めいた視線がぶつかる。迫る凛。超至近距離で濃艷な赤い瞳が揺れる。
今夜、どうしても凛に抱かれたい。
そんな衝動が背骨を伝い全身に駆け巡る。
「汐…好きだ」
返事はさせてもらえず、そのまま組み伏せられた。
さらさらと流れる凛の髪が汐の頬にかかる。
それを掻き上げるように頬を撫でると、汐は凛にキスをした。
凛の手が汐の後頭部に添えられる。
逃がさねぇぞと、言わんばかりに手に力が入った。
凛の舌がぐっ、と奥まで入ってくる。
口の中いっぱいに凛を感じて苦しいくらい。
空いている左手は、服の上から汐のやわらかな膨らみを捉えた。
「は…っ…ぁん…」
重なる唇から立つ水音は大きく淫ら。
互いの唾液を交換し、絡み合う。混ざり合う。
唇が離れると、ねっとりとした糸がふたりを繋ぐ。
激しいディープキスとは対照的に、服越しに汐の胸に触れる凛の手つきはあくまでも優しい。
凛は一度上体を起こすと、バサッと音を立てて服を脱ぎ捨てた。
薄闇に浮かぶ逞しい身体。ベッドの上では何度見ても緊張するし興奮する。それ以上に魅了される。
汐が凛の身体を見つめて惚けていると、いつの間にか着ていた服のボタンを全て外され凛の手がブラジャーのホックにかけられていた。
それもパチンと呆気なく外されると、凛の目の前に瑞々しい桃色の先端とやわらかな双丘が晒される。