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Affectionate Photographs

第8章 Birthday Night ※



午前0時になった瞬間に凛がサプライズで訪問してきたことには本気で驚いた。
4月22日。今日は汐の18歳の誕生日。

凛に祝われるまで自分の誕生日のことを忘れていた。
だから倍嬉しかったのだと思う。
込み上げるのは嬉しさ、幸せ、凛が好きで好きで堪らない…凛に対する愛情。

プレゼントも花束も嬉しいが、凛が1番に誕生日を祝う為に会いに来てくれたことが汐にとってはこれ以上ないくらい幸せだった。感動した。
本当に、愛されていると実感した。

生まれてきてくれてありがとうなんて、今まで誰にも言われたことが無かった。
そう、家族にも言われたことが無い。

それを初めて伝えてくれたのは凛。

人生で初めて、生まれてきてよかったと心から思った。

長くて濃いキスをしながら幸せを噛み締める。
やがて唇を離すと、汐は口を開いた。

「ありがとう」
「おう。誕生日おめでとう」
見つめ合うこと数秒。同じタイミングで笑顔になって抱き合うのはもうお決まり。

「凛くん着替えてくる?部屋着、隣の部屋に置いてあるよ」
「ああ。さんきゅ」



部屋着に着替えた凛が汐の部屋に戻ってきた。
しかし、そこに汐の姿はなかった。

「あれ、汐?」
トイレにでも行ったか、と思いベッドに寝転がる。
すっかり自分の家のようにくつろぐ凛。
ふたりで寝ても丁度いいサイズのセミダブルベッド。
広いベッドは手足が伸ばせて羨ましい、なんて凛はごろごろと寝返りを打ちながら思った。

「あー、凛くんお待たせ」
扉が開く音と共に汐が戻ってきた。

「おう。勝手にくつろがせてもらってる」
「全然いいよ。今ね、凛くんからもらったお花の水切りをしてきたの」
汐の口から馴染みのない単語が出てくる。
久しぶりに汐お嬢様な面が見られるか。

「水切り?」
「花瓶に活ける前の準備、かな?」
「ふぅん。すげぇな、そんなことも出来るなんて」
「お水を張ったバケツの中で茎を少し切るだけだよ」
「活け花習ったことあんのか?」
「ないよ。けど、お母さんがよくお花もらってくるから少し齧ったことならあるかな」
ちなみに華道は璃保の専売特許、と汐は笑った。


「汐」
こい、と寝転んだまま凛は腕を広げる。
寝転ぶ凛の傍らに汐は腰を下ろし、その腕の中に身体を預ける。
ぎゅうっと強く抱きしめられて、汐は表情を崩した。

「汐ーおめでとう」
「ありがとうー」
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