第7章 Half Year Anniversary!
贈り物をどう捻出したかを訊くなど、無粋なことに他ならないが、それでも汐は訊かずにはいられなかった。
それもそのはずだった。
凛が汐に贈った封筒の中は、隣の県にある縁結びで有名な神社への旅行とその近辺にあるホテルのスイートルームのペアでの宿泊券。
到底一介の高校生の手に入る代物ではないと汐は言った。
「この前鮫柄水泳部で雪祭りに行ったんだ。そこに〝玄人の射的〟ってのがあってな。それで獲った」
玄人の射的。システムは夏祭りにあるような射的と変わらないが難易度に天と地の差がある。
一般的な射的が児戯に思えるほどだった。
その代わりに最新型のゲーム機や旅行券など、価格にして4万は軽く超える代物が景品に並ぶ。
景品というよりも賞品という方が正しいハイリスクハイリターンなものであった。
凛の話を聴いて汐は頷いた。
スナイパーのような眼差しと構えで狙いを定めながら自分のことを考えていた、という姿を想像すると笑いがこみ上げてくる。
しかしそれは決して馬鹿にする笑いではなく、喜びからくる笑みだった。
「凛くん射的得意だもんね!ありがとう!ほんとに嬉しい!」
「ああ。これからもふたりでたくさん思い出作っていこうな」
チケットの期限は4月末まで。
年度末の部活のオフを利用して汐とそこに行こうと思う。
大国主命が祀られていて縁結びとして有名だが、同時に桜の名所でもある。
汐と一緒にお花見もしたい。
大好きな人と一緒に見る一番好きな花、桜の花はさぞ綺麗なことだろう。
凛は今から楽しみだった。それを糧にすればどんなに厳しい練習だってトレーニングだって乗り越えられる。
「ねぇ凛くん、この後時間ありそう?」
凛からもらった旅行券を大切そうに鞄の中にしまうと汐はそう切り出した。
「ん?ああ。夕飯は割と遅くまでやってるし、大丈夫だ」
腕時計で時間を確認しながら凛は答えた。
「ほんとに?あたしケーキ食べたい!せっかくの記念日なんだし!ケーキでお祝い!」
「お前ほんとにケーキ好きだな。…あ、それか焼肉にするか?汐の奢りで」
「あたしの奢りー?うーん、いいよ!」
「冗談だって、真に受けるなよ」
えー冗談なの?と言う汐に苦笑いをしながら凛は立ち上がった。
「ケーキ食い行くぞ。ほら、立て!」
「うん!」
立ち上がろうとする汐の手を思いきり引き、その勢いで転びそうになった汐を抱きしめた。