第6章 榊宮の姉と松岡の妹
橙に染まる道を歩く。伸びる影法師は3つ。
「汐ちゃんが着てる制服ってスピラノですよね?」
「そう、スピラノ。完全中高一貫だったから佐野中じゃなかったんだよね」
微かに甕覗色のがかった白が夕陽をうけてスカートに影を落とす。
「江ちゃんは…岩鳶?」
「はい!」
制服可愛い、と汐は笑った。汐からしたら、女子高生の代名詞といっても過言ではないブレザーとプリーツスカートの制服が羨ましかった。
一応スピラノもそうなのだが、ブレザーというよりもジャケットに近いしスカートもボックスプリーツタイプで可愛いとは言い難い。
「江ちゃんは部活なにやってるの?」
「私、水泳部のマネージャーやってます!」
「そうなの?あたしも水泳部のマネージャーやってるよ」
「え!そうなんですか!?...スピラノ水泳部ってすごく有名ですよね!」
男子水泳部のマネージャーをやっていてもスピラノの名は知っていた。
少数精鋭の女傑のスピラノ水泳部は広く名が知れていた。
「岩鳶水泳部っていったらハルくんと真琴くんの後輩になるね」
「え!?遙先輩と真琴先輩のこと知ってるんですか?」
「うん、知ってるよー!この前のカニ祭りで会ったよ」
予想外の答えに江は目を丸くする。意外なつながりだ。
汐はカニ祭りのことを思い出した。
あの時が初対面だったのだが、全くそんな気がしなかった。機会があればまた話したいと思う。
「じゃあ明日お二人に汐ちゃんのこと伝えておきますね!」
「うん。伝えといてー!」
女ふたりが機関銃のように喋りまくる様子に、微笑ましいと思いつつ夏貴は苦笑いを浮かべる。
「そっかー、江ちゃん水泳部のマネージャーだったんだ。合同練習のお誘い待ってるね」
「え、女子校なのに男子水泳部と合同練習したりするの?」
「やるよー。鮫柄にもよくお邪魔させてもらうし」