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Affectionate Photographs

第5章 榊宮姉弟のお顔のヒミツ


「なんか、なし崩し的にこうなったね」
「そうだな」
凛からしたら甘そうなことこの上ないケーキを前に汐は苦笑いを浮かべる。
フォークを握り、ケーキに刺す。
一口サイズに切り取られたそれを凛の前に差し出し汐は小首をかしげた。

「凛くんも食べる?」
「いや、俺は…」
いい、と断ろうとしたがテーブル越しに上目遣いで見つめる汐に対して〝NO〟とは言えなかった。
惚れたら負けを実感しながら〝あーん〟でケーキを食べさせてもらう。

「甘ぇ…」
苦虫を噛み潰したような表情で凛はケーキを飲み込む。
そのなんとも言えない凛の顔を見て汐は笑った。


ケーキを頬張る汐を眺めながら凛は先ほどの璃保の話を思い起こす。
汐はクォーター。確かに頷ける話だ。
外国人よりは彫りの深さが足りないが、純日本人というには洋の要素が強い顔立ち。

「凛くんどうしたの?あたしの顔をまじまじ見つめて。あ、クリームついてるとか?」
そう言って紙ナプキンで口元を控えめに拭う姿に微笑ましい気分になる。

「そうじゃねぇよ。ただ、お前の顔が日本人にしちゃ洋の要素がはっきりとでてんなぁって思っただけだ」
あ、今一瞬動きが止まった。なんて凛は思った。
汐は口元を拭う手を止めると困ったように笑った。

「璃保からなにか聞いたの?」
「汐お前クォーターだったんだな。さっき聞いて驚いたぜ」
一瞬虚をつかれたような表情をした汐だったが、すぐにいつも通りに戻った。

「なんだ、そのことね。…そうだよ。あたしと夏貴はイタリア系アメリカ人のクォーターだよ」
汐がそうなら弟の夏貴ももちろんそうだ。
ルーツはイタリアのアメリカ人とのクォーター。とても腑に落ちてしまう。
確かに夏貴こそそれっぽい。だからあんなに整った顔をしているのかと納得してしまった。

「ああ、だからお前ら姉弟はふたりとも美人なんだな」
「もう、凛くん、褒めてもなにもでないよ…」
恥ずかしそうに俯く汐の頭を凛はそっと撫でた。

「ま、俺は汐の外見に惚れたわけじゃねぇけどな」
「え?」
どういうこと、と顔を上げて自分を見つめる赤紫の瞳になんだか恥ずかしくなってくる。
しかし言い出したのは自分だ。
どうせなら最後まで言ってしまおう。

「や、その、外見全く関係なしってわけじゃねぇけど…。お前は一緒にいて飽きねぇし落ち着くんだ。部活にも理解がある。だから手放したくないって思う」
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