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Affectionate Photographs

第5章 榊宮姉弟のお顔のヒミツ




「は?あいつ、クォーターだったのか?」
「ええそうよ。なに、アンタほんとに知らなかったの?」
驚嘆する凛とは裏腹に璃保は涼しい顔でそう伝える。

11月の終わり、凛は買い出しで駅前のショッピングモールに来ていた。
そこで部活帰りの璃保と汐に会って話していた。
丁度汐は今お手洗いに行って席を外している。

「いや、知らねぇよ…」


ことのいきさつはこうだ。

お手洗いに出た汐の後ろ姿を見つめる凛に璃保はこう言った。

「汐が可愛いからってトイレに行く姿まで見つめるのは単なる変態よ」
「誰が変態だ。あーでも、汐、単純に外見すげぇ可愛い顔してるよな」
「なによ、惚気?」
冷やかすように眉毛を上げる璃保。ロイヤルブルーの瞳は楽しげに揺れる。

「うるせぇ。客観的に見て、だ」
例えそれが彼氏である凛でなくても、彼女を見た人は十中八九可愛いと言う。
鮫柄の部員もそうだし、なにより凛自身がそうだった。

「ふぅん。ま、汐が可愛いってのは当たり前っちゃ当たり前よね」
「どういうことだ?」
〝当たり前〟の意味が理解出来ずに凛は訝しげに璃保を見つめる。
鬱陶しそうに璃保は口を開いた。

「どういうって、あの子クォーターじゃない」

「…は?」
初耳だ。汐の口からはそんなこと一言も聞いてない。

「知らなかったの?汐の母親の榊宮サエコはハーフよ」



汐の母親がハーフで娘の汐がクォーターだということを知らされて今に至る。

「あいつ時々びっくりするようなことを隠すよな」
両親が医者と大学准教授であること。弟がいること。自らが理系であること。そして母親がハーフであること。
みな人伝いで伝わったことや、済し崩し的に知ったことが大半である。

「隠してるつもりはないと思うけどね。まぁ、〝榊宮家〟はいろいろあるのよ。汐のこと責めるんじゃないわよ」
「んなことする訳ねぇよ」
「ならいいわ。…あ、汐戻ってきた」
璃保の声に振り向くと、樺色の髪を揺らしながら汐がこちらに向かって歩いていた。

「遅くなってごめんね。お手洗いすごく混んでたの」
「いいわよ。…あ、凛。そういえば汐がここの中にあるカフェでケーキ食べたいって」
唐突に璃保は凛に話を振る。

「は?いきな…」
しかしそれは最後まで言わせてもらえず。

「アンタたち最近喧嘩から仲直りしたばっかよね。そこで愛でも語り合ってきなさい」
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