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Affectionate Photographs

第5章 榊宮姉弟のお顔のヒミツ


「もー!凛くんったら!」
恥ずかしさに耐えきれなくて逸らした瞳を汐に戻す。
そこには満面の笑みに満ちた愛らしい顔。


(ああそうだ、俺はこの笑顔が好きなんだ)

汐の泣き顔を見たことがない。
泣き顔よりも笑顔の方が似合う。
だったら自分が笑顔でい続けさせてあげよう。

「顔が可愛いってことよりも、俺はその笑顔が好きだ」

一瞬の間。きょとんとした顔を笑顔に戻しながら汐はこっそりテーブルの下で凛の脚を軽く蹴った。
そして声にせず口元だけでこういった。

『周りを見て』

その言葉に凛は周囲を見回す。
すると近くの席の客が笑顔でこちらに視線をやっていた。
やってしまった、声が大きかった。周囲に筒抜けだ。

「もっ…、もう食い終わったろ!出るぞ!」
視線にいたたまれなくなり凛は伝票を掴んで席を立った。
その様子が可笑しくて可愛くて汐は荷物をまとめながらこっそり笑っていた。


会計を済ませて店を出た。そしてそのままエレベーターに乗り込んだ。

「公開告白みたいだったね」
くすくす笑いながら汐は凛を茶化した。

「うるせー」
「凛くんすごく恥ずかしそうで面白かった」
「てめぇ笑うなよな」
「でも、」
赤面しながら額を押さえる凛の手を両手で包み込み、背伸びをしてその顔を覗き込む。

「あの言葉、とっても嬉しかった」
やっぱり汐の笑顔が好き。
空いた右手を汐の頬に添えた。

「な、凛くんこんなとこで…途中で人が乗ってきたらどうするの?」
「構うもんか」
遠慮無しにどんどん近づく凛の顔。

「もう、そこは構ってよねー!」
と文句を口にするが、一言も拒否する言葉を言わない。否、言えない。
惚れたら負け、を思考の片隅に置きながら汐は凛と唇を重ねた。


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