第3章 凛と汐のとある休日
「今日は楽しかったね」
「そうだな」
プリクラを撮った後はウィンドーショッピングをした。
1日中一緒にいたのは初めてだったからとても楽しく感じた。
しかし楽しい時間というのは残酷に、とても早く過ぎていく。気づいたらもう帰りの時間だった。
帰らせたくない、まだ一緒にいたい。凛は汐と手を繋ぎながらそう思った。
「帰りたくない、なぁ…」
まるで繋いだ手から凛の気持ちが伝わったかのように汐はそう呟いた。
帰したくないからと言って寮に連れ帰るわけにはいかない、思わず凛は立ち止まってしまった。
「凛くん?」
「そんな顔すんな。また、こうして遊びに行くぞ」
そうだ、これで終わりではない。
これからたくさん一緒に遊びに行けばいい。
だから寂しそうな顔をしないでほしかった。
汐に切ない顔をされると本気で帰したくなくなってしまう。
「そうだね。凛くんといっぱいいろんな所行きたい」
ふわりと汐は微笑んだ。
笑ってくれた汐にホッとしながら凛はあるものを取り出した。
「汐、これ、やるよ」
「え?…うそ、可愛い!凛くんありがとう!」
それはレッド、ホワイト、ワインのストーンがあしらわれたゴールドのヘアピンだった。
ウィンドーショッピングをしていた時に立ち寄ったアクセサリーショップで売っていたものだった。
一目見て汐に似合うと凛は思い、汐が他の商品を見ている際にこっそり買っていた。
「ニヤニヤすんなっ」
とても喜んでくれた汐が可愛くて嬉しくて、つい凛は照れ隠しでそう言ってしまった。
そんな凛のことばを無視して汐は満面の笑みを浮かべた。
「ほんとに嬉しい!」
周囲に人がいないことを確認した。
そして凛は汐のことをそっと抱きしめた。
控えめに背中に腕をまわす汐が愛おしくて仕方がない。
汐、と呟くと彼女は凛を見つめた。
そのまま凛は優しく汐にキスをした。
唇を離して凛は呟いた。
「その、喜んでくれて、俺も嬉しい、デス」
「もう、凛くんどうしてそんな片言なのー!」
そう笑いながら汐は凛の肩口に頭をあずける。
このまま時間が止まればいいのに、と凛は思ってしまった。